イスラム国指導者死亡から1年 依然として残るISの求心力

Mariam Zuhaib / AP Photo

 アフガニスタンの首都カブールで24日、貧困にさらされる若者たちが読み書きを学ぶ教育施設を狙った自爆テロ事件が発生し、これまでに30人あまりが死亡、70人以上が負傷した。事件後、イスラム国(IS)が犯行を認める声明を出した。

 以上が日本のメディアで報道される事実関係であるが、これだけを聞くと、あたかもISの戦闘員が中東からアフガニスタンに渡ってテロを起こしているようにも聞こえるが、実際に事件を起こしたのは「ISのホラサン州」だ。おもにタリバンなどから分派した地元戦闘員らで構成され、一部インド人やパキスタン人、また、シリア・イラクなど中東からやってきた戦闘員が加わっているという。今回のテロは、アフガニスタンの少数派でシーア派の信者が多いハザラ族を狙ったもので、ISのホラサン州による事件とみて間違いない。ISはシーア派を敵視し、シーア派を狙ったテロを繰り返している。

◆ISの指導者バグダディ容疑者の死亡から1年
 今月下旬で、ISのバグダディ容疑者の殺害からちょうど1年となる。トランプ米大統領が去年10月27日、バグダディ容疑者がシリア北西部イドリブ県で米軍の攻撃により死亡したと発表し、その後ISの公式メディアもそれを認め、アブイブラヒム・ハシミ・クラシ(Abu Ibrahim al-Hashim al-Quraishi)という人物を後継者に指名したと発表した。そして、パキスタンやソマリア、エジプト、イエメン、フィリピン、バングラデシュなど各地でISを支持する武装勢力が、新しい指導者へ忠誠を誓うとする動画をネット上に公開したが、クラシ容疑者の実態についてはよくわかっておらず、本人からの声明も依然として発信されていない。まさに、実態がよくわからない人物に支持を表明するという異様の状態が続いている。

 また、ISは去年3月にシリア東部バグズを奪還されて以来、支配地域を喪失しており、世界のメディアの関心を買うようなテロを実行できていない。そして、組織の弱体化により、ISが発信する動画やメッセージの頻度や鮮度の低下も顕著になっている。

 だが、安心できる情報だけではない。米国のシンクタンク「Washington Institute」の中東専門家が最近発表した情報によると、ISがイラクとシリアで犯行声明を出したテロ事件は9月に99件を記録し、8月の139件から40件減少したものの、今年に入ってからは1月に88件、2月に93件、3月に101件、4月に151件、5月に193件とピークに達し、6月に87件、7月に115件と推移し、依然として活動を継続しているという。

Text by 和田大樹