続く人種差別と、社会に潜む「見えない」カースト

クリックス店舗前でデモをするEFF支持者|Shiraaz Mohamed / AP Photo

 9月上旬、南アフリカの薬局チェーン、クリックス(Clicks)が自社のオンラインショップに掲載した、黒人の髪の毛を好ましくない髪の状態例として表現した広告に対し、ツイッター上などで抗議行動が発生。南アフリカの過激派左翼政党である「経済的解放の闘士、Economic Freedom Fighters(EFF)」も便乗し、クリックスに対する抗議行動と、全国展開する店舗の一時的な閉鎖を強いるという事態が起こった。なぜ、南アフリカや米国、そして世界において、こうした人種差別的な言動・事例やレッテル貼りが起こり続けるのか。そこに根強く存在する「見えない」カースト構造とは。

◆黒人の髪型を扱った差別広告
 問題となったのは、ユニリーバ傘下のヘアケアブランド、トレセメ(TRESemmé)の広告。ナチュラル・ヘア(ストレート・パーマなどを施していない細かいカールがかかった髪の毛)の(黒人に見える)モデルの写真と、オレンジがかったブロンドヘアをした、(白人に見える)モデルの画像を並列し、ナチュラル・ヘアには「乾燥したダメージヘア」や「縮れて、さえない髪」、ブロンドヘアには「繊細で平らな髪」「普通のヘア」という表現のキャッチコピーを掲載した。

 これに対し、#BlackHairIsNormal(黒人ヘアも普通ヘアだ)といったようなハッシュタグとともに、ツイッター上などで抗議行動が起こり、クリックス、ユニリーバは謝罪声明を出すとともに、広告を取り下げた。しかし、南アフリカの第3政党であるEFFは抗議を続け、9月7日の月曜日から金曜日までの5日間、全国に570店舗以上を展開するクリックスの全店舗の営業停止を要求。主要モール内の店舗の前に居座り、監視とデモ抗議を展開。EEFは、1994年に南アフリカが民主化し、マンデラ大統領が勝利して以来、政権を維持してきたアフリカ民族会議(ANC)の元青年同盟のリーダー、ジュリアス・マレマ(Julius Malema)がANCから除名され、2013年に結党した政党だ。2019年の総選挙で、議席数を44議席にまで増やし、その比率を前回の6%から11%まで伸ばした。EFFはマルクス・レーニン主義の考えに影響された反帝国主義の極左政党だが、民主化後、長らくANCに希望を見出せていない、黒人の若者らの支持を増やしているようだ。

Text by MAKI NAKATA