新型コロナ:若者は加害者なのか、被害者なのか

Francois Mori / AP Photo

 この夏の新型コロナの感染再拡大は、春と比べて若い世代で広まっている。そのため、一部には若者の無責任な行動がウイルスの拡散を助長しているのだという声が上がっている。しかしその一方で、若い世代はむしろパンデミックの被害者なのだと説く声もある。

◆開放的な夏のイベントに危惧の声
 フランスでは5月半ば外出制限の緩和が始まって以降、若者の集う大きな催しがしばしば問題視されてきた。「音楽祭を祝うためパリの通りに集まった何千もの若者は、まったくソーシャルディスタンスを取っていなかった。7月半ばニース(中略)で催された巨大屋外コンサートも同様だった」と、ラ・デペシェ紙(8/2)は伝える。そのほか、日の長い夏の夜、ビーチや川岸に群衆が集う様子も散見され、そのたびに感染拡大を危惧する声が上がった。若い世代はCovid-19の無症状感染がより多いため、知らない間に感染を広げる恐れがあると思われるからだ。

◆感染ベクター(媒介者)とみなされる若者
 これは杞憂に終わらず、感染の増加は実際、若い世代を中心に広まった。この夏、アメリカ、カナダ、スペイン、ベルギー、フランスなどの若者間で感染が広がったとされ、日本も同様だ。第3回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボードでは、7月3日~9日の新規感染者数に関して「感染者の3/4は、20代~30代」と報告された。

 この世界的な傾向を目にし、WHOも8月5日、若者に感染のベクター(仲介者)となり得ることを再度忠告し、ウイルスの蔓延を避けるために責任ある行動をとるよう求めた(20minutes紙、8/5)。また各国の保健機関も警鐘を鳴らした。フランスの保険総局は、「おそらく(若い世代で)ソーシャルディスタンスや、感染防止策がきちんと取られていないことが理由であろう」(フィガロ紙、7/29)と発言しているし、カナダの保健局最高責任者であるタム教授らも「カナダの若者らに、新型コロナ感染を広げるのをやめるように」(ラジオ・カナダ、7/25)呼びかけた。スペインのマドリッド市は、8月5日若者にマスク着用を求めるキャンペーンを開始し、啓蒙動画を公開した。その内容は、若者らが暑い夏の間マスクをせずにパーティを繰り返す様子から、病室、そして火葬場へと移動し「マスクよりも熱いものがある」というメッセージで締めくくる、なかなかショッキングなものである。

Text by 冠ゆき