米中衝突に備えるオーストラリア 国防費拡大、インド太平洋に力点

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 緊張高まる米中関係を意識するオーストラリアは、米豪同盟に頼らない積極的な対中防衛の姿勢に転じた。ここ数十年で最大規模の軍事戦略上の大きな転換点となる。同国は米豪同盟を結びながらも中国を最大の貿易相手国としており、難局に立たされている。

♦︎岐路に立つオーストラリア
 オーストラリア政府は同国軍部に対し、軍事上の力点をこれまでの中東和平から豪国内へ移すよう指示した。従来よりも飛距離の長いミサイルの配備などに予算を割いており、中国などからの防衛を意図したものと見られる。同時にアメリカに対し、今後は中東問題などで必ずしも足並みを揃えない可能性があると警告を発した。アメリカへの協力を通じてではなく、インド太平洋地域の和平に対して直接的な役割を担ってゆく姿勢を明確に打ち出した形だ。英ガーディアン紙は、オーストラリアの防衛戦略上、ここ数十年で最大の変化だと報じている。

 アメリカと同盟関係にありながら中国との貿易に大きく依存するオーストラリアは、これまで米中間の衝突に関し、どちらつかずの立場を取り続けてきた。豪公共放送ABC (7月4日)は、関係を両立できるという期待はまやかしだと釘を刺している。結局のところ経済と安全保障の結び付きが強いアメリカを優先することになり、結果として中国を敵に回す可能性は否定できないというのが同記事による見解だ。

Text by 青葉やまと