米抗議デモ、人々が警察に求める「アカウンタビリティ」とは?

Christopher Dolan / The Times-Tribune via AP

 先月28日にミネソタ州ミネアポリスで発生した白人警官による黒人男性ジョージ・フロイドさん殺害事件で、警察によるとくに黒人男性に対する過剰な武力行使に焦点が当たっている。今回の事件では、白人警官がフロイドさんの首を9分間近く膝で圧迫して殺害。その後この警官は逮捕され、第二級殺人罪などの罪で起訴された。

 今回の事件はミネアポリスという大都市で白昼発生したもので、事件を多くの人が目撃しており、そのなかの一人がビデオ撮影してソーシャルメディアに投稿したことから注目を集めるに至った。しかしもしビデオがなかったら、このような事件が起こった後に「被疑者が拘束に抵抗したため、やむを得ず押さえつけた」という弁解がまかり通っていたかもしれない。アメリカの警察は機構自体だけでなく強力な組合によって保護されており、はっきりとした証拠がない限り、被疑者が警察の拘束中に不明確な理由で死亡した場合うやむやに済まされることが多い。

◆警察の不正行為がビデオ撮影で明るみに
 しかし、現代はほとんどの人々がスマートフォンを持ち歩き、気軽に写真やビデオを撮影できる時代だ。ビデオに収められたフロイドさんが息絶えていく様子はソーシャルメディアで拡散され、アメリカだけでなく全世界に大きな衝撃を与えた。そしてアメリカ中に警察や政府に抗議するデモと暴動が瞬く間に広がっていったのだ。

 フロイドさんの事件が起こる前に、ジョージア州では今年2月、ジョギング中の黒人男性が、彼を「怪しい」と思った白人男性親子に殺害される事件が起こった。しかし、この事件は5月までニュースになることもなく、逮捕者も出ないままで埋もれようとしていた。CBSニュースによると、同州ブランズウィックでジョギングをしていたアーマード・アーベリーさんを、白人親子2人と隣人がトラックで追跡。走ってきたアーベリーさんを銃で殺害し、その様子を隣人がビデオで撮影していたという。この事件で特筆すべきは、アーベリーさんを殺害した親子2人のうち、父親が地元警察を退職した人物だったことである。この事件はあわや「正当防衛」として処理され、5月までほとんど報じられることもなかったが、ビデオが公開され拡散したことで全国ニュースとなり、やっと警察が容疑者を逮捕するに至った。

 またケンタッキー州ルイビルでは3月13日、夜中に間違ったアパートに押し入った私服警官3人が、寝ていた救急隊員の女性ブリオナ・テイラーさんを射殺する事件が発生。この事件ではまだ逮捕者が出ていないばかりか、CBSニュースによると、事件から3ヶ月経った6月11日、ルイビル・メトロポリタン警察が提出した事件報告書はほぼ空欄だったという。

Text by 川島 実佳