新型肺炎:中国政府は正確な情報を出していない? 現地研究と矛盾 初期対応失敗か

Chinatopix via AP

 武漢市で発生した新型コロナウイルスの感染は、現在までに中国国内で6000人近く確認され、死者も100人を超えた。感染はすでに日本を含む世界十数ヶ国に広がっている。感染拡大の理由として、中国政府の初動が遅れたことが指摘されており、その理由が浮かび上がってきた。

◆医学誌の論文、政府発表と食い違う
 中国の保健当局が最初に新型肺炎の発生を公表したのは12月末だ。ほとんどの患者が武漢の華南海鮮市場を訪れたことがあったと発表され、新型ウイルスの感染はこの市場から始まったと現在でも考えられている。最初の患者の症状が現れたのは12月12日とされた。発表の時点では人から人への感染についての明確な証拠はないとされ、新型ウイルスには市場の動物から直接感染したと思われていた(ウェブ誌『Vox』)。

 ところが、中国の研究者たちのグループが医学雑誌ランセットに発表した論文は、政府の発表と食い違うものだった。論文は最初に入院した41人の患者について調査。そのなかで、最初の感染者はすでに12月1日に発症しており、この患者は問題の市場を訪れたことはなかったと報告している。この最初の患者と後のケースには疫学的関連は見つからず、実は41人中13人が市場に足を踏み入れた経験がなかったという。

 この論文のデータが正しいとすれば、最初の感染は遅くとも11月には起こっていたことになる、とジョージタウン大学のダニエル・ルーシー氏は説明する。つまり、ウイルスは12月末に華南海鮮市場からの感染が発見される以前から静かに広がっていたことになる(科学誌サイエンス)。

 さらに、同じ論文では1月9日に最初に亡くなった人物から妻に感染が起きていたこと、また別のランセットの論文では、武漢市を訪れウイルスに感染した家族と接触した深圳市の家族が、華南海鮮市場を訪れなかったにもかかわらず、1月10日までに新型ウイルスに感染していたこともわかった。この時点で人から人への感染が始まっていたことになる(Vox)。

 武漢市の保健当局は、1月11日に診断の確定した患者は41名のみと発表。18日まで数に変動はないとし、人から人への感染の証拠はないと繰り返してきた(サイエンス誌)。

Text by 山川 真智子