不法滞在者も対象、NY市が「市民皆保険」提供へ 独自に改革に乗り出す地方自治体

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 アメリカは日本やカナダのような「国民皆保険」が存在しない国だ。よって、国民・合法的移民を含む住民は通常民間の健康保険プランを購入するか、雇用先から支給される健康保険に加入することになる。しかし、雇用先から支給される健康保険は基準が州によって異なる。筆者の住むハワイ州では、単独の雇用先で週20時間以上働く場合、従業員への健康保険を無負担で支給することが義務付けられているが、他州ではフルタイムで働いても健康保険には自分で加入しなければならない場合もある。

 2008年に開始された「オバマケア(医療保険制度改革)」では、国民も含め合法的なアメリカの住民全員に健康保険加入が義務付けられ、違反者には罰金が課された。いざというときのために医療保険は必要であるものの、低所得者にとっては月々の高額な保険料は大きな負担であることは間違いない。その後、トランプ大統領就任後に医療保険加入義務が廃止されたため、近年また非加入者が増えたと思われ、「国民皆保険」とはさらに遠い状況になっているのが現状だ。もちろん、不法滞在者には通常、健康保険加入の資格がない。

◆ニューヨーク市が不法滞在者にもヘルスケア提供へ
 そんななかで、ニューヨーク市のビル・デブラシオ市長が8日、同市で「市民皆保険」ともいえる低所得者や不法滞在者も加入可能なヘルスケアプログラム「NYCケア」設立を発表した。ABCニュース(電子版)の同日付記事によると、デブラシオ市長の計画では、保険金の掛け金の支払い能力や滞在資格にかかわらず、基準を満たしたニューヨーク市の居住者すべてに加入資格が与えられる。

 記事によると、同市では現在およそ60万人の住民が健康保険を保持していない。そのなかにはまだ若く、お金はあっても健康保険を持たない選択をしている人も多いという。同市ではこのヘルスケアに年間およそ1億ドルがかかると予想している。

Text by 川島 実佳