ニューヨークが東のシリコンバレーに? グーグルら巨人が拠点拡大の動き

Oxford Properties / COOKFOX Architects via AP

 シリコンバレーが今、シリコンネイションとしてアメリカ全土に広がる勢いだ。
 
 17日、グーグルは10億ドル以上を投じてニューヨーク市に新しいオフィスビルを建築すると発表した。インターネット検索の巨人である同社は、今後ニューヨークでの雇用を促進し従業員を倍増する予定だ。

 これは、大手ハイテク企業がアメリカ西海岸のシアトルからサンフランシスコに至る地域を越えて拠点を拡大しようという、最新の大規模な計画である。本拠地以外での本格的な営業にも乗り出しているアップルやアマゾンの動きに、足並みを揃えようとしている。

 フォレスター・リサーチの主席アナリストであるアンドリュー・バーテルズ氏は、「ハイテク企業は、アメリカにおける先端テクノロジー研究開発の伝統的な中心地だったベイエリアで物価が高騰し、人口は過密状態に陥っていることを認識している」と語る。

 同氏は、「数多くの業者が『他の地域でも、もっと費用を抑えて最高の人材を雇用できるはずだ。さらに、家計のやりくりに奔走している従業員にもっと良いライフスタイルを実現してもらえるはずだ』と気づき始めている」と言う。

 高度な教育を修了した若者が集中していることから、アメリカ北東部はハイテク企業にとって魅力的な地域だ。特にニューヨークはウォールストリートにもなじみが深く、先端テクノロジーに関わるスタートアップ企業がベイエリアに次いで全米で2番目に多くニューヨークに集中し、大勢の従業員の拠点になっているとバーテルズ氏は語る。カリフォルニア州メンロパークに拠点を置くフェイスブックは、ニューヨークに2,000人以上の従業員がいる。

 カリフォルニア州マウンテンビューを拠点とするグーグルの上級副社長兼最高財務責任者であるルース・ポラット氏は、同社がニューヨーク市を流れるハドソン川沿いのウエストビレッジ近郊にある170万平方フィート以上の広大な土地に、オフィスビルを建てる計画を進めているとブログ上で明らかにした。

 グーグルは20年近く前にニューヨークに最初のオフィスを開設し、現在では7,000人の従業員が働いている。その規模は急速な拡大を遂げている。グーグルは今年、チェルシーマーケットのビルを24億ドルで購入し、ピア57ではさらに広いスペースを借り入れる予定であると発表している。いずれも新たに建築を発表したハドソン川沿いのオフィスビルから1マイルほどの距離にある場所だ。

 ポラット氏は、1ヶ月前に開催された技術会議の席で、グーグルがニューヨークで従業員を倍増する予定であることを表明した。

 ポラット氏は、「驚くかもしれないが、誰もがシリコンバレーに住みたいと思っているわけではない。だから当社はアメリカ国内のあらゆる場所に活気あふれる拠点を設ける機会を追い求めていきたいと考えている」と述べている。

 このニュースは、先に発表されたアマゾンの計画に続いて報じられた。1ヶ月前、シアトルを拠点とするアマゾンはニューヨークのロング・アイランド・シティ近郊とバージニア州アーリントンに新たな本社を設け、それぞれ2万5,000人程度の新たな雇用を生み出す計画を発表した。

 しかし、こういった拠点拡大の動向の恩恵にあずかるのは東海岸だけではない。カリフォルニア州クパチーノに拠点を置くアップルは先週、10億ドルを投じてテキサス州オースティンに新しいキャンパスを設立し、少なくとも5,000人の新たな雇用を創出する計画があると発表した。

 グーグルは他のあちこちでも同様に、依然としてオフィスを購入し、本社近くに新しいキャンパスを次々と広げている。こういった計画の背後には、インターネット検索、電子メール、ウェブブラウザ、デジタルマッピング、オンラインビデオ、およびスマートフォン向けのソフトウェアで成功を収め、さらに例えば医療やインターネットにつながるコネクテッドホームなどの領域でも収益を上げようという同社の狙いがある。

 グーグルは最近、1億ドル以上を投じてカリフォルニア州サンノゼのダウンタウンにある広大な土地を購入し、従業員のための住宅地を含む広大な新しいキャンパスを敷設することに同意した。

 マイクロソフトも同様に、ワシントン州レドモンドで本社機能を整備し、同地でさらに8,000人の従業員の居住地を確保するため18棟の新しいビルを建築する計画を進めている。この地域では、およそ4万7,000人の従業員が同社で働いている。

 しかし、スキルの高いプログラマーを求める激しい雇用競争が報酬の高額化を招き、その代償として、家屋の建築にかかる平均的な金額がサンフランシスコのベイエリアのあちこちで急騰し、100万ドルを超えている。ハイテク企業で働く多くの従業員は、他の場所に住むことを選んでいる。そのため、主なハイテク企業は、自社に不可欠な従業員をつなぎとめるためにも新しい場所を探す必要に迫られている。

 グーグルは、2020年までに新しいキャンパスに拠点を移したいと考えている。ポラット氏によると、グーグルの直近の投資によって、ニューヨークで今後10年間に同社の従業員を2倍以上に増やすことができる見込みだという。

 ハイテク企業は、新たな視点を取り入れる方法としてニューヨークに焦点を合わせている。バーテルズ氏は、この視点はシリコンバレーで得られるものと異なるという。「エコーチェンバー現象」のように既に形成された同質の意見が集まる閉じられたコミュニティから離れることで、新たな風を吹かせることができるという。

 バーテルズ氏は、「ニューヨークの人々は、アメリカにおけるリアルな都市生活を経験している。だからこそ、平均的なアメリカ人の需要に密接に関連したプロダクトやサービスの創出に、革新をもたらすことができると自負している」と語る。

By MAE ANDERSON, Associated Press
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Text by AP