「あとは社会が決めてくれる」遺伝子操作ベビーの科学者「責任感じている」

AP Photo / Mark Schiefelbein

 中国のある研究者が、世界初の遺伝子操作ベビーの誕生に貢献したと主張している。今月誕生した双子の女児のDNAを、生命の設計図さえも書き換えることができる強力な新しいツールで変容させたというのだ。

 もし事実であれば、科学と倫理の両面で大きな飛躍となるだろう。

 アメリカのある科学者が中国でこの研究に参加したと証言しているが、この手の遺伝子操作はアメリカでは禁止されている。DNA変化が次世代に引き継がれ、他の遺伝子を傷つける恐れがあるためだ。

 主流派の科学者の多くはこの研究を危険すぎる試みだと考えており、人体実験だと非難する声も上がっている。

中国の深圳(シンセン)に拠点を置く研究者の賀建奎(ヘー・ジャンクイ)氏によると、不妊治療中の7組のカップルの胚(受精卵)を改変し、うち1組が妊娠、出産に至ったという。この研究の目的は、遺伝性疾患の治癒や予防ではなく、ほとんどの人が生まれつき持っていない形質――将来起こり得るHIV(AIDSを発症させるウィルス)感染への抵抗力を与えることだと同氏は語った。

 賀氏によると、この双子の両親は身元の特定につながる取材を拒否しており、その所在や治療が行われた場所は明らかにされていない。

 賀氏の主張に裏付けはなく、専門家による査読が行われる科学雑誌で発表されていない。11月26日、賀氏は香港で27日から29日まで開催予定の遺伝子操作に関する国際会議の主催者に本件を報告。それに先立ち、AP通信の独占取材に応じた。

「世界で前例のない研究を成功させたことに大きな責任を感じています」という賀氏は、このような科学を認めるか禁じるかについては、「今後どうすべきかは社会が決めてくれるでしょう」と話す。

 彼の主張に耳を疑い、強く非難する科学者もいた。

Text by AP