「あとは社会が決めてくれる」遺伝子操作ベビーの科学者「責任感じている」

AP Photo / Mark Schiefelbein

 HIV感染は中国で深刻な問題となっており、その対抗手段として胚性遺伝子の操作を試みたと話す賀氏は、AIDSを発症させるウィルスであるHIVの細胞への侵入を許すタンパク質を生成するCCR5と呼ばれる遺伝子の無効化を目指した。

 今回の被験男性は全員HIV陽性で、女性は全員HIV陰性だったが、今回の遺伝子操作はわずかな感染のリスクを避けるために行われたのではないと賀氏話す。父親たちの感染は一般のHIV治療薬で徹底的に抑制されており、子孫への感染を防ぐ簡単な方法が他にもある。

 新たな選択肢として、同じような運命から子どもを守れるかもしれないチャンスをHIVの脅威にさらされたカップルに提供することが魅力だったのだ。

 賀氏によると、遺伝子操作は体外受精または実験室の皿で行われた。まず、HIVが潜んでいるかもしれない精液から分離するために精子を「洗浄」した。1個の精子を1個の卵子に注入し、1個の胚を作成。そして、遺伝子操作ツールの出番だ。

 3~5日目の胚から、操作用にいくつかの細胞を取り除きチェックした。カップルは操作した胚を使って妊娠を試みるか否かを選択できた。賀氏によると、双子を妊娠するまでに6回の試みで11個の胚が使われた。

 検査の結果、双子の片方には意図した改変遺伝子のコピーが2個あり、もう片方には1個しかないが、他の遺伝子を破壊した痕跡は見られなかったと賀氏は話す。コピーが1個しかない場合、HIVに感染する可能性がある。

 賀氏がAP通信に提供した資料を数名の科学者が検討し、結論を出すにはこれまでの検査では不十分との見解を示した。

 被験者が今回の目的と潜在的なリスクやメリットを完全に理解していたかは定かではない。例えば、同意書にはこのプロジェクトが「AIDSワクチン開発」プログラムであると記されていた。

 今回の被験者は倫理学者ではないが、「何が正しくて何が正しくないか判断する権限があります。自分たちの人生がかかっているのですから」と賀氏は話す。

「この研究は被験者家族と子供たちを救うと信じています」という賀氏。望ましくない副作用や危害が生じてしまったら、私も彼らと同じ痛みと、自分の責任の重さを感じるでしょう」

By MARILYNN MARCHIONE, AP Chief Medical Writer
Translated by Naoko Nozawa

Text by AP