「反体制」ではない…殺害されたサウジ記者、愛国者の素顔
アメリカ在住のサウジアラビア人ジャーナリスト、ジャマル・カショギ氏がイスタンブールのサウジ総領事館で殺害された。暗殺と見られ、ムハンマド・ビン・サルマン皇太子の関与が疑われている。カショギ氏とはどんな人物だったのか。
◆名家の出身 サウジと海外を結ぶジャーナリストとして活躍
カショギ氏の祖父はトルコ人で、サウジアラビアの建国者、アブドルアジズ・サウード国王の主治医であった。一族で最も有名なのは、おじのアドナン・カショギで、武器商人として財を成した人物だ。カショギ氏の古くからの友人である、Institute of Gulf Affairsのアリ・アルアハメッド氏は、一族は裕福で教育のある人々だと述べている(米公共ラジオ網NPR)。
カショギ氏はアメリカの大学を出た後、ジャーナリストとして親サウジアラビア政府のメディアで活躍した。1980年代には当時アフガニスタンでソ連兵と戦うゲリラ戦士だったオサマ・ビン・ラディンにインタビューしたこともある。2001年9月11日の同時多発テロの際には、サウジの新聞社の編集長として、海外のジャーナリストたちにイスラムテロリストの行動を理解させるうえでの、貴重な情報源になったとブルームバーグは解説している。またNPRによれば、同時多発テロ後はアメリカに足を運び、今でもサウジの指導者が信頼に足るというメッセージを送る役目も果たしたということだ。
◆反体制派ではなく愛国者 王室による改革を支持していた
カショギ氏はサウジ王室の主要メンバーに近い存在となり、海外駐在の大使として赴任した王族のメディア担当官にも任命された。2005年には、ワシントンDCのサウジ大使の主要アドバイザーにもなっており、王室を守る代弁者の役目を担った。その一方で、2000年代にサウジの新聞社の編集長として、過激主義者や、宗教的価値を押しつける国のやり方を批判する論説や風刺画を掲載し、2度も解雇されている(ブルームバーグ)。
日本のメディアでは、カショギ氏は反体制ジャーナリストとして紹介されるが、前出のアリ・アルアハメッド氏は、カショギ氏は王室の批判者というよりも、むしろ愛国者だったと述べている。王室による段階的な改革を支持する人物であり、民主的な体制への転換を望む自分とは、多くの意見の不一致があったと回想している(NPR)。
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