景観犠牲の日本方式で解決? 住宅価格の高騰に悩むロンドン、サンフランシスコ

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 現在世界の大都市では住宅難と価格高騰が問題となっているが、東京だけはそういった問題とは無縁だという。日本の住宅は築後数十年で価値がなくなってしまうとされ、その壊しては建てるという文化は、欧米からは理解しがたいものだった。しかしこれこそが、現代の大都市の問題を解決する方法ではないかと注目を浴びている。

◆新築志向が原因? マイホームも22年で無価値に
 エコノミスト誌は、日本の住宅は平均22年で無価値になるという野村証券による数字を紹介。日本では、中古より圧倒的に新築が好まれ、ほとんどの住宅は壊しては建て替えられる。逆に欧米では、2017年の住宅販売の90%は中古で、新築はわずか10%だった。

 欧米では、ライフステージに合わせて住み替えて行くため、家自体の価値は維持される。しかし農耕民であった日本人は同じ場所に留まることを習慣としてきたため、中古住宅を買うという発想に慣れなかったのが新築志向の原因の一つだと同誌は述べている。また、地震が多いことから、最新の耐震基準に合った住宅に住みたがる人が多いこと、戦後人口が急速に増えたため、質より量のプレハブ住宅のような家が大量に作られたことが、住宅寿命が短い理由だとしている。日本の不動産業者は、「古い」と「魅力的」という言葉は、日本の住宅においては両立し得ないと同誌に語っている。

◆世界で続く大都市の住宅難 東京は例外
 これまでネガティブに捉えられてきた日本の住宅事情だが、フィナンシャル・タイムズ紙(FT)のロビン・ハーディング記者は、世界の大都市で住宅難と価格高騰が問題となるなか、日本の「壊しては建てる」という文化に注目する。

 2014年において、人口約3,870万人のカリフォルニア州の住宅着工件数は8万3657件、人口約5,430万人のイギリスでは13万7010件だった。ところが人口約1,330万人の東京の住宅着工件数は14万2417件にもなっている。サンフランシスコ、ロンドン、港区を比べた場合、この20年間で3つの地域とも人口は増加しており、サンフランシスコの住宅価格は231%、ロンドンは441%上昇している一方、港区ではたった45%しか上昇していない(FT)。ウェブ誌『Vox』は、インフレを考慮してもサンフランシスコの住宅価格は2倍以上になっているが、東京はほぼ変わらないと述べている。

Text by 山川 真智子