「移動式モスク」でイスラム教徒をおもてなし 東京五輪に先立ちお披露目
白と青を基調とした1台の大型トラックが豊田スタジアの外に停まり、ゆっくりと礼拝所に姿を変える。
モバイルモスクへようこそ。
2020年夏のオリンピックに向けて世界中から日本を訪れる人々を迎える準備が進められるなか、東京に本社を置くスポーツ・文化イベントの企画・運営を行う企業が移動式のモスクを開発した。イスラム教徒の選手や観客に自国と同じように過ごしてもらえたらと同社の代表は話す。
YASU PROJECT(ヤスプロジェクト)代表の井上康治氏は、2020年に日本を訪れるイスラム教徒が利用できるモスクが不足する可能性があり、これは自国を国際社会の一員と考える国にとって憂慮すべき事態だと話す。同社のモバイルモスクは必要に応じてさまざまなオリンピック会場に移動することができる。
「開かれた居心地のいい国として、日本の“おもてなし”の心をイスラム教徒のみなさんと共有したいのです」と先日のインタビューで彼は語っている。
7月23日、トヨタ自動車の本社所在地としても有名な、愛知県豊田市にあるJリーグ開催スタジアムの豊田スタジアム前イベント広場で、モバイルモスク第1号が公開された。
改造した25トントラックの荷台のリヤドアが開き入口が姿を現すと、車体幅が2倍に広がる。48平方メートルのモスクは50人を収容できる。
礼拝前に身を清めるための野外水道と洗い場を完備したモスクの中で、イスラム教徒の招待客が祈りを捧げていた。
2004年のスマトラ島沖地震で被災したインドネシアの生徒や学生も、お披露目式に招待された。
「日本に住むイスラム教徒や日本を訪れるイスラム教徒の旅行者にとって、モバイルモスクはとても価値のあるものです。友だちにも見せたいです」とヌール・アジザさん(14歳)は話す。
現在、推定10万~20万人のイスラム教徒が日本で生活している。
日本人招待客の1人、サカグチ・タツヤさんは、モバイルモスクは世界中の人々の心を開くきっかけになるだろうと期待を口にする。
「モスクの中にいる人たちを外から見ていましたが、みなさんとてもうれしそうでした」と大阪の小売企業で代表取締役を務めるサカグチさんは話す。
4年前、カタールを旅行中にこのプロジェクトの着想を得たという井上氏。
もとよりプロジェクトの実行委員会は、日本国内外の国際スポーツイベントをターゲットにしたい意向だ。このプロジェクトが、宗教的インフラの溝を埋める以上の役割を果たすことを期待していると井上氏は話す。
「将来的に、インドネシア、マレーシア、アフリカ、中東の人々やシリアからの難民に世界平和を促進するツールとして、モバイルモスクを使ってもらえれば嬉しいです」
By NICOLA SHANNON, Associated Press
Translated by Naoko Nozawa