欧州で中国車の存在感急上昇 購入検討55%、変わる中国車への評価
2026年10月、パリモーターショーに展示された中国ブランド「JAECOO」のSUV|OKcamera / Shutterstock.com
10月12日、第91回パリモーターショー(Mondial de l’Auto Paris)が開幕した。地元のステランティスグループやルノーの存在感に優るとも劣らないのが中国勢だ。実際に、モーターショーに出展する60を超えるブランドのうち25は中国勢と、中国メーカーが全体の約4割を占めている。
すでに欧州市場でも一定のシェアを獲得しているMGやBYDだけでなく、長安汽車や奇瑞汽車など、まだ欧州の街中で見る機会が少ないメーカーも、大きな展示スペースを確保して欧州進出を盛んにアピールしている。
数字も勢いを裏付ける。ドイツの自動車研究機関、自動車管理センター(CAM)によれば、EU・EFTA・イギリスを合わせた欧州市場で、中国系自動車メーカーの2026年上半期の新車販売台数は前年同期比65%以上増加し、グループ単位で集計した市場シェアは7%から11%に上昇した。BYDは今年1月から8月に前年同期比144%増となる約23万4000台を登録し、テスラを上回った(欧州自動車工業会(ACEA))。
パリの街角でも、BYDの「ドルフィン」や「ATTO 3」、MGのSUVなどを見かける機会は目に見えて増えており、タクシーやUberなどの車両として使用されていることも珍しくなくなっている。
◆中国車を購入候補にする欧州人が増加
では、消費者はこの中国ブランドの進出をどう見ているのか。コンサルティング会社のホルヴァート社が4400人を対象に実施した調査では、中国車の購入を検討する欧州人は55%と、2023年末の調査時の43%から大きく伸びた(ロゴス・プレス)。イギリスの自動車サイト、カーワウの調査でも、中国ブランドを購入候補に含めるというイギリスのドライバーの回答は49%に達し、理由として最も多かったのは「コストパフォーマンス」だった。
ただし、ドイツは事情が異なる。DATレポートによれば、新車購入者の56%が以前と同じブランドを選び、ブランドへの忠誠心は根強い。中国ブランドの購入を「想像できる」と答えた新車購入者はわずか5%だった。一方、29歳以下の自動車所有者では35%が購入を検討できると回答。また、女性は男性よりも中国ブランドの参入を歓迎する傾向が見られた。
◆価格だけではない、中国車が選ばれる理由
どのような層が選んでいるのか。フランスで存在感を増すMGの場合、2025年の販売の約6割が個人客だった。売れ筋は電気自動車ではなく、割引適用後に2万ユーロを切る価格で販売されているハイブリッドの「MG3」や、SUVの「ZS」だ。同じくフルハイブリッドを採用するルノー・クリオ(日本名ルーテシア)やトヨタ・ヤリスクロスなどより安価で、価格と装備のバランスを重視する家族層にとって、合理的な選択肢となっているようだ。実際に、私のフランス人の義兄も、10年以上乗っているプジョー208の買い替えを検討しており、MGのZSも候補のひとつとなっている。
価格以外に評価されているのは、技術と装備の充実ぶりだ。ホルヴァート社の調査を分析した米バーンスタインは、中国メーカーの強みとしてバッテリー技術とソフトウェアの統合を挙げている。EVでは既存ブランドへのこだわりが比較的弱く、新しいブランドの車を試そうとする消費者も一定数いる(カー・レブズ・デイリー)。
スペインの消費者・ユーザー機構(OCU)が2026年に発表した自動車の信頼性調査でも、BYDは39ブランド中6位に入り、欧州の老舗メーカーの多くを上回る評価を得た。ただし、同じ中国系ブランドでもMGは下位に位置しており、メーカーによる評価の差は大きい。
とはいえ、ブランドへの信頼はまだ道半ばだ。2025年にイギリス、ドイツ、フランス、スペイン、イタリアで実施された調査では、中国製品全般を信頼すると答えた人は19%にとどまった。また、72%が中国車は現在所有する車の購入価格より安いべきだと考えており、性能が上回っていても中国車により高い金額を払うという人は13%にとどまる(インサイドEVs)。
欧州市場において「安くて良い車」としては認められつつあるが、「高くても欲しい」ブランドにはまだなっていないことがうかがえる。
◆欧州メーカーの強みは守れるのか
欧州メーカーにとって、これは強みと弱みの両方を映す鏡だ。歴史、販売・整備網、ブランドへの信頼では依然として優位にある。だが開発スピードと価格では競争が厳しさを増しており、ルノーは新型トゥインゴEVの開発期間を21か月に短縮するなどして対応を急いでいる(チャレンジ)。
今年のパリモーターショーでの中国勢の勢いを見ていると、欧州市場における中国車のシェアは今後さらに拡大する可能性が高そうだ。
開幕日に会場を訪れたマクロン大統領は、ルノーやステランティス、ヴァレオといった自国勢のブースを回り、「欧州産業を守る」という姿勢を鮮明にした。その直前には、EUと中国が中国製ハイブリッド車の輸入抑制で原則合意したばかりだ。
それでもBYDはフランス国内の販売拠点を130から200へ広げる計画を掲げ、腰を据えて欧州に根を下ろす構えを崩していない(エコノミー・マタン)。思えば、かつての日本車や韓国車も「安かろう」と見られながら、やがて欧州で確固たる地位を築いた。中国車はその道をなぞるのか、それとも別の道を切り開くのか。今年のパリモーターショーは、その分岐点に立つ欧州の姿を映し出しているのかもしれない。





