中国の輸出36%急増、好調の裏に潜む危機 成長の原動力が弱点になる理由
中国・深センの塩田国際コンテナターミナル(2025年1月)|hu250238702 / Shutterstock.com
中国の第3四半期の経済成長率が予想を上回り、拡大する輸出が国内の消費や投資の低迷を補うというここ数年の傾向がさらに続いていることが確認された。中国の輸出主導型戦略は成功しているかに見えるが、その強みが弱みに転じる局面が近づいているという指摘もある。
◆輸出絶好調 貿易黒字も記録更新か?
中国の7〜9月期の国内総生産(GDP)は前年同期比で4.5%増加となり、市場見通しを上回った。これにより、4.5〜5%と設定した通年の成長目標を達成する可能性が高まっている。
9月の輸出は36%急増し、1〜9月の貿易黒字は9381億ドル(約147兆円)に達した。世界的な人工知能(AI)ブームが強力な追い風になっていると見られ、フィナンシャル・タイムズ紙の試算では、輸出増加分の約3分の1を半導体とコンピュータ機器が占めている。中国は昨年1.2兆ドル(約189兆円)の貿易黒字を記録しているが、今年はこれを上回る見通しだという。その一方で、小売売上高はわずか1.1%増にとどまり、不動産市場の崩壊が始まって以来、ほぼ横ばいの状態が続いている。
◆中国の輸出拡大に欧州が反発 対中規制強化へ
中国の習近平国家主席は、2020年に国内市場を主体とし、国内外の経済循環が相互に促進し合う「双循環」戦略を打ち出した。しかし、英タイムズ紙に寄稿したイギリスのリシ・スナク元首相は、双循環とは、中国が誰にも依存しない一方で世界を中国に依存させることを目的にしたものだと主張。多額の補助金と人為的に保たれた自国通貨安に後押しされ、中国の強大な産業生産能力の拡大に終わりは見えず、先進国から途上国まで、貿易相手国に経済的損害を与えていると述べている。
驚異的なペースで増える中国からの輸入品に対策を打ち始めたのが欧州だ。欧州連合(EU)の行政を担う欧州委員会(EC)のフォン・デア・ライエン委員長は、10月16日の記者会見で、2025年の対中貿易赤字が1日平均10億ユーロ(約1760億円)に達し、2026年にはさらに拡大すると説明。こうした構造的な貿易不均衡は持続不可能だと警告した。10月中旬に中国と合意したハイブリッド車の輸出抑制に続き、既存の貿易防衛措置を活用するとともに、新たな対策を講じる方針を示した。
フランスとドイツは、EU経済に深刻な悪影響を及ぼす国に対し、欧州市場へのアクセスを迅速に制限できる新制度を提案している。フォン・デア・ライエン委員長も、両国の提案を踏まえて制度の開発を進めると表明した。ただし、制度の具体的な内容や導入時期はまだ決まっていない。中国製品をEU市場から完全に締め出すような事態は考えにくいものの、仮に実施されれば中国の経済モデルを崩壊させかねないと、シドニー・モーニング・ヘラルド紙の経済コラムニスト、バーソロミューズ氏は指摘する。
政治・経済のオピニオン誌、フォーリン・ポリシーは、アメリカのトランプ政権の通商政策が結果として中国の輸出拡大を後押ししていること、現地産業への実害にもかかわらず途上国では安価で高品質な中国製品を歓迎していることなどから、中国から譲歩を引き出す意志と影響力を持つ欧州の対応がカギになると見ている。
◆AIブーム失速なら中国経済に打撃も
中国の輸出主導型戦略を脆弱にするのは、貿易相手国による報復の可能性や市場アクセスの喪失だけではない。アメリカ中心のAIブームは脆弱かつ不安定な基盤の上に築かれており、巨額の資金需要に対して、資金提供者がリスクを強く意識し始めている。このため、AI投資が大きく減速する可能性もある。中国の輸出の伸びは、AIブームに乗った半導体などのハイテク製品の輸出がけん引しており、この分野の著しい減速が生じれば、極めて破壊的な結果をもたらすとバーソロミューズ氏は指摘している。
銀行・金融サービスグループ、INGの大中華圏チーフエコノミスト、リン・ソン氏は、中国の成長がますます不均衡になっている中、ハイテク分野の設備投資サイクルの減速や新たな関税ショックが、今後1年間で注視すべき主要なリスクだと述べている(ニュースサイト『アクシオス』)。





