女性は男性より感情知能が高い、そこに問題が潜む 大規模研究
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著:Mary M. Hausfeld(リムリック大学、経営学助教)
著:Jochen Menges(チューリヒ大学、未来の働き方におけるリーダーシップ研究センター長)
感情知能が高い人と聞いて、誰を思い浮かべるだろうか。場の空気を読み、言い争いを収め、友人が悩んでいるときには何と声をかければよいかを心得ている人だろうか。多くの人が思い浮かべるのは女性だ。この見方はあまりに広く浸透しており、一般向けの心理学でも事実として扱われるほどである。
私たちは、この通説を検証することにした。ベラ・ハンペル博士とともに主導し、レオン・バッハも共著者として加わった新たな研究では、1995年から2023年までの約30年間にわたる、76か国、60万人以上を対象とした研究を分析した。明らかにしたかったのは、女性は本当に男性より感情知能が高いのか、という単純な疑問だ。結論を先に言えば、答えは「イエス」である。平均すると、女性のほうが高い得点を示した。
しかし、より有益な発見は、女性が感情知能のどの側面に優れているのか、そしてその能力が当人にどのような負担をもたらしうるのか、という点にある。
感情知能とは、自分や他人の感情を認識し、理解し、調整する能力を指す。感情知能を構成する要素を個別に分析したところ、女性の優位性は「他人の感情」に関わる側面に集中していることがわかった。
つまり、相手が何を感じているのかを察知し、なぜそう感じているのかを理解し、相手が自分の感情をうまく扱えるよう手助けする能力だ。例えば、子供が感情を爆発させたとき、会議で提案を退けられた同僚が黙り込んだとき、交渉の場が緊迫したときなどに発揮される。もちろん、こうした対応が得意な男性も大勢いるし、苦手な女性も大勢いる。今回の結果は数十万人の平均的な傾向を示すものであり、目の前にいる特定の人物の能力を予測するものではない。
では、この男女差は単に生物学的なものなのだろうか。生物学的要因やホルモンの影響を完全に排除することはできない。しかし、私たちのデータに見られた2つの傾向は、それ以外の要因を示唆している。女性の優位性は成人に比べて子供でははるかに小さく、また、調査対象となった約30年間で男女差は縮小していた。生まれつき決まっている特性なら、このような傾向は予想しにくい。今回の研究データだけでは、こうした違いが生じる正確な理由を特定することはできないものの、この傾向は練習や経験を通じて形成される能力だと考えれば説明がつく。
そうした練習の機会がどこから生まれるのかについても、考えられる要因がある。別の研究では、親は息子よりも娘に対して、感情を表す言葉を幅広く使い、女の子には自分の気持ちを振り返り、言葉にするよう促すことが多いとわかっている。
一方、男の子は、感情を抑え込むことで対処するよう促されることが多い。それに対し、女の子は他人と関わりながら自分の感情に向き合い、対処するよう勧められる。これはまさに、私たちのデータで女性が優れていると示された社会的・感情的な能力そのものだ。
要するに、女の子は幼いころから、他人の感情を読み取り、それに応じて行動する練習を、より多く積んでいると考えられる。新しい言語を学んだり、楽器を習ったりするのと同じで、繰り返しによって身につく能力は、練習すればするほど自然に発揮できるようになる。
実際、58件の研究を対象とした2019年のメタ分析では、感情知能は訓練によって高められることが示された。また、感情知能を高めるための学習効果は、性別によって左右されないとみられることもわかった。
これは朗報だ。感情知能が生まれつき決まった特性ではなく、訓練によって伸ばせる能力であるなら、男女差は避けられない運命ではない。つまり男性も、こうした能力を身につけることで、交渉や仕事など、さまざまな場面で恩恵を受けられる。
しかし、ここにはあまり歓迎できない示唆もある。女性がこの能力に優れていることがスキルとして認識されず、単に「女性とはそういうものだ」と捉えられてしまえば、周囲はそれを当然視しやすくなる。緊張した場を和ませるのが得意な同僚は、いつもその役割を果たすよう期待される人になる。こうして能力はいつの間にか義務へと変わり、報酬も評価も与えられなくなる。
職場では、こうしたことが日常的に起きている。従業員がチーム内の緊張を和らげ、ストレスを抱える同僚を支え、対立を穏便に収めれば、組織は恩恵を受ける。これはチームが円滑に機能するために欠かせない仕事だが、人事評価に反映されることはほとんどない。
今回の研究結果を踏まえ、実務面では2つの変化が必要だ。第一に、雇用主はこうした働きを仕事として明確に認識し、人事評価や昇進の判断において正当に報いるべきだ。第二に、すべての従業員がこうした能力を伸ばせるよう、育成に投資する必要がある。
同じことは職場以外にも当てはまる。家族や友人との関係でも、友人がつらい1週間を過ごしていることを覚えていて、頼まれなくても様子を尋ねる人、グループチャットで誰かが返信しなくなったことに気づく人、家族にいつも「今日はどうだった?」と声をかける人は、実際に労力を費やしている。しかし、そうした気遣いがいとも簡単に行われているように見えるからこそ、当然のことと受け止められがちだ。
だからといって、女性がこの分野で実際に強みを持っていないという意味ではない。私たちのデータは、感情に関わる能力において女性が優位にあることを示している。しかし、その強みを育成すべき能力ではなく、当然備わっているものとみなし、皆で分担するのではなく女性だけに期待するような状況を、助長すべきではない。男性には、こうした能力を伸ばす余地がまだ十分に残っている。困ったときに誰もが頼りにする人は、単に運がよかったわけでも、生まれつきそういう人間だったわけでもない。おそらく、ほかの人より多くの練習を積んできたのだ。
私たちはこれまで、ほかの人たちにも同じように練習する機会や動機を与えてこなかった。そして何より、感情知能がそもそも伸ばす価値のある能力だということを、十分に明確にしてこなかったのである。
This article is republished from The Conversation under a Creative Commons license. Read the original article.
Translated by NewSphere newsroom
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