ドジャース、スター軍団の維持に暗雲? サラリーキャップが導入されたら何が起きるのか
ナ・リーグ地区シリーズ第4戦に勝ち、記念撮影するドジャースの選手たち(10月7日)|Mike Stewart / AP Photo
大谷翔平、山本由伸らを擁し、豊富な資金力を武器にスター選手を集めてきたロサンゼルス・ドジャース。その大型補強戦略に、今後大きな制約が生じる可能性がある。
大リーグ機構(MLB)が、各球団の年俸総額に上限を設ける「サラリーキャップ」の導入を提案しているためだ。
ドジャースでは2027年に契約が残る14選手だけで、提案された上限額を約9400万ドル上回る計算になる。制度が実現すれば、現在のようなスター軍団を維持し、さらに補強を重ねることはできるのだろうか。
◆主力14人だけで上限案を約9400万ドル超過
MLBが5月に提示した新たな労使協定案では、2027年のサラリーキャップは2億4530万ドル。各球団に一定額以上の支出を求める下限も設け、1億7120万ドルとしている。
現在のMLBには、年俸総額が基準額を超える球団に課税する「ぜいたく税」の制度がある。しかし、提案されたサラリーキャップは、原則として上限を超える支出そのものを認めない仕組みだ。
ドジャースにとって問題となるのが、すでに結んでいる大型契約だ。
ドジャース専門サイトトゥルー・ブルーLAの集計によると、2027年に契約が残る14選手の年俸総額は、現在のぜいたく税算定基準で約3億3950万ドルに達する。
内訳には、大谷の約4608万ドル、山本の約2708万ドル、ムーキー・ベッツの約2555万ドルに加え、カイル・タッカーの約5720万ドルなどが含まれる。
14人分だけで、MLBの上限案を約9420万ドル超える計算だ。
しかも、これには年俸調停対象選手やその他の選手の年俸、福利厚生費などは含まれていない。
ただし、上限案は福利厚生費も含めた金額であり、14人の年俸額との比較はあくまで参考値だ。新制度で実際に約9400万ドルの削減を求められると決まったわけではない。
◆米紙が指摘する「資金力で解決できない」可能性
こうした状況に、アメリカのメディアも注目している。
ロサンゼルス・タイムズ(LAT)のビル・シェーキン記者は10月16日付のコラムで、ドジャースが今後、これまで資金力で解決してきた編成上の問題について、難しい判断を迫られる可能性を指摘した。
具体例として挙げたのが、救援投手2人に総額1億4100万ドルを投じた契約や、今オフにフリーエージェント(FA)となるタリク・スクーバル投手の再契約だ。
サラリーキャップが導入されれば、豊富な資金を投じることで複数のスター選手を確保する、従来の補強手法には制約が生じる可能性がある。
さらにMLBは6月、FA契約に新たな制限を設ける案も提示した。
他球団からFA選手を獲得する場合、契約期間を最長5年とし、2027年に始まる契約では最大総額を約2億200万ドルとする内容だ。自球団の選手との再契約には、最長6年、最大約2億6500万ドルという別の上限を設ける。
新規契約での年俸の後払いも禁止する案だ。
大谷の10年総額7億ドルのような超大型契約や、後払いを利用した契約を今後新たに結ぶことは、提案どおりなら難しくなる。
◆主力の大量放出が必要になるわけではない
もっとも、サラリーキャップが導入されれば、ドジャースが直ちに主力選手を大量放出しなければならない、というわけではない。
MLBは最初の提案で、既存の保証契約は引き続き保証され、2026年以降も契約が残る選手に変更は生じないとしている。
また、LATによると、球団側は既存契約に対応するため、サラリーキャップへの移行期間を設ける意向を示している。
ただし、移行期間の長さや、その間の支出をどう扱うかなど、詳細はまだ決まっていない。
したがって、大谷や山本らの放出を現時点で予測する根拠はない。
一方、既存の大型契約を抱えたまま上限に近づける必要が生じれば、新たなスター選手の獲得だけでなく、契約満了を迎える主力の引き留めや、代わりの戦力の確保にも影響する可能性がある。
例えばフレディ・フリーマンの現在の契約は2027年で終了する。LATは、同選手が40歳までドジャースでプレーすることを望んでいると伝えており、契約延長の判断も今後の注目点となる。
◆導入は未定、選手会は強く反対
もっとも、サラリーキャップの導入自体が決定したわけではない。
球団側は、資金力による格差を縮め、より多くの球団が優勝を狙える環境をつくる必要があると主張している。
これに対し、大リーグ選手会は、サラリーキャップが選手の報酬や契約上の権利を制限するとして、導入に強く反対している。
現行の労使協定は12月1日に失効する。新協定で合意できなければ、球団側がロックアウトに踏み切る可能性もある。
今後の交渉で上限額が変更される可能性もあり、最終的にどのような制度になるかは不透明だ。
それでも、議論の中心にあるのは、ドジャースのような高額年俸球団が今後も自由に補強できるかという問題である。
大谷や山本らとの長期契約を維持することと、その周囲に新たなスター選手を集め続けることは別だ。今回の労使交渉の結果は、ドジャースの将来の戦力編成を大きく左右する可能性がある。




