年俸総額はドジャースの半分以下 ブルワーズはなぜ強い? スターを手放しても勝つ補強術

ナ・リーグ優勝を喜ぶブルワーズのイエリッチ選手。10月15日、ロサンゼルス|Gregory Bull / AP Photo

スター選手を集める球団に、スターを手放しながら勝ち続ける球団が勝った。大リーグのミルウォーキー・ブルワーズは10月15日、ナ・リーグ優勝決定シリーズで、大谷翔平選手らを擁するロサンゼルス・ドジャースに4連勝。1982年以来44年ぶりのワールドシリーズ進出を決めた。

両球団の資金力には大きな差がある。2026年のポストシーズン開始時点の年俸総額は、ドジャースの約3億3800万ドルに対し、ブルワーズは約1億4350万ドル。30球団中19位で、ドジャースの半分にも満たない。

しかも、一度きりの番狂わせではない。ブルワーズは過去9年間で8度のプレーオフ進出、地区4連覇を達成。今季は大リーグ最多の103勝を挙げた。

資金力で劣る球団が、なぜ強さを維持できるのか。その秘密は、主力選手の放出を恐れず、次の戦力を生み出す独特の編成術にある。

◆エースも守護神も、FA前に放出
2024年2月、ブルワーズは2021年のサイ・ヤング賞投手コービン・バーンズをボルティモア・オリオールズへトレードした。フリーエージェント(FA)になるまで残り1年という段階での決断だった。

代わりに獲得したのは、若手内野手ジョーイ・オルティスと投手DL・ホールら。オルティスは今季、打率2割7分を記録し、ホールもプレーオフで貢献した。

2022年には、地区首位を走っていたシーズン途中に守護神ジョシュ・ヘイダーをサンディエゴ・パドレスへ放出した。

チームはその後失速し、プレーオフを逃した。当初は失敗に見えたトレードだが、見返りに獲得した選手たちが後の補強につながっていく。

◆守護神の放出が、球界屈指の捕手獲得に
ヘイダー放出から約4か月後、ブルワーズはアトランタ・ブレーブス、オークランド・アスレチックスとの3球団トレードに参加した。

放出したのは、ヘイダーとの交換で獲得した外野手エステウリー・ルイーズ。一方、ブレーブスからはオールスター捕手ウィリアム・コントレラスらを獲得した。

コントレラスは移籍後も活躍し、2024年にはナ・リーグMVP投票で5位に入った。今季のプレーオフでも打線の中心を担っている。

守護神を手放した際の見返りが、別のトレードを経て主力捕手の獲得につながったのだ。

AP通信は、こうしたブルワーズの補強戦略を詳しく紹介している。主力の放出を単なる戦力低下で終わらせず、次の補強に結びつけることが球団の強さを支えている。

◆他球団が手放した選手を主力に
大型トレードだけではない。他球団で評価を落とした選手の獲得も、ブルワーズの得意とするところだ。

2023年には、ミネソタ・ツインズでメジャー契約の40人枠から外れた救援投手トレバー・メギルを獲得。メギルは2025年にオールスターに選ばれ、直近3シーズンで計81セーブを記録。今季も守護神として活躍している。

一塁手ジェイク・バウアーズも、巨額契約で迎えたスターではない。2023年にヤンキースからトレードで獲得し、2025年にはマイナー契約で再加入。今季の年俸は270万ドルだった。

それでもドジャースとのナ・リーグ優勝決定シリーズではMVPに選出され、ワールドシリーズ進出の立役者となった。

◆短大出身の投手がサイ・ヤング賞候補に
選手の発掘と育成も強さの柱だ。

その象徴が、速球派右腕ジェイコブ・ミジオロウスキー。ブルワーズは2022年、ミズーリ州の短期大学クローダー・カレッジから、ドラフト2巡目で指名した。

球団で成長した右腕は今季16勝、防御率1.80、252奪三振を記録。ナ・リーグのサイ・ヤング賞有力候補にまで成長した。

ブルワーズは同じ短大から2018年にもアーロン・アシュビー投手をドラフト4巡目で指名している。アシュビーも今季のプレーオフで好投し、投手陣を支えている。

◆将来のスターには先行投資
一方で、ブルワーズはすべてのスター選手を手放すわけではない。

2018年にトレードで獲得したクリスチャン・イエリッチは、移籍初年度にナ・リーグMVPを受賞。球団は2020年、既存契約を含めて9年総額2億1500万ドルの長期契約を結んだ。

若手選手への投資にも積極的だ。外野手ジャクソン・チョーリオとは、メジャーデビュー前の2023年に8年8200万ドルの契約を締結。今季はクーパー・プラット内野手、ルイス・ララ外野手ともデビュー前に長期契約を結んだ。

MLB公式サイトによると、ララとの契約は7年間で保証額約3100万ドル。実績が固まる前の投資にはリスクもあるが、将来の主力を早い段階で確保できる利点がある。

高額になる前に主力を放出し、見返りを新たな補強に生かす。他球団が見逃した選手を発掘する一方、将来性の高い若手には思い切って投資する。

ブルワーズが実践しているのは、単なる節約ではない。限られた資金を誰に、いつ使うかを見極める戦略だ。ドジャースを破った快進撃は、その積み重ねが実を結んだ結果といえそうだ。

(AP通信の記事を基に、情報を補足・再構成)

By STEVE MEGARGEE AP Sports Writer

Text by AP