『スパイダーマン』幻のMJ、なぜ全出演シーンを削除? 本人が12年越しに明かす

シェイリーン・ウッドリー(2014年4月)|Ga Fullner / Shutterstock.com

 映画『アメイジング・スパイダーマン2』には、撮影まで終えながら公開版から完全に姿を消したキャラクターがいる。ピーター・パーカーの恋人として知られるメリー・ジェーン・ワトソン(MJ)だ。

 MJ役に起用されたのは、『ダイバージェント』シリーズなどで知られる俳優シェイリーン・ウッドリー。アンドリュー・ガーフィールドとのシーンも撮影したが、出演部分はすべてカットされた。

 2014年の映画公開から12年。ウッドリーが8月、SAG-AFTRA Foundationのキャリア回顧インタビューで、当時製作側から告げられた理由を明かした。

◆憧れのMJ役 撮影後に突然「映画には出ない」
 ウッドリーにとって、MJは思い入れのある役だった。

 インタビューでウッドリーは、スパイダーマンが一番好きなスーパーヒーローで、MJも子供のころから大好きなキャラクターだったと説明。役が決まったときには、とても興奮したという。

 しかも、オーディションで勝ち取った役ではなかった。マーク・ウェブ監督との面談を経て出演が決まり、それまでオーディションを受けて役を得てきたウッドリーにとっては、戸惑いを感じる経験でもあったという。

 その後、ガーフィールドと「3シーンほど」を撮影した。

 ところが約1年後、製作側から思いがけない連絡が入る。ウッドリーによると、「もう映画には出ない」と告げられ、「どういうこと?」と驚いたという。

◆なぜ全カット? グウェンの死後に登場するはずだった
 製作側から説明された理由は、物語の構成にあった。

 ウッドリーによると、『アメイジング・スパイダーマン2』ではすでに多くの新キャラクターを登場させていたため、MJの登場を先送りすることになったという。

 さらに重要だったのが、ガーフィールド演じるピーターと、エマ・ストーン演じるグウェン・ステイシーの関係だった。

 映画ではピーターとグウェンの恋愛が物語の大きな軸となり、終盤でグウェンは命を落とす。製作側は、グウェンの死後にMJを登場させる方針だったという。

 ウッドリーによれば、グウェンが死ぬ作品でピーターの新たな恋愛相手まで登場させるのは不自然だと判断された。本人も、この説明には納得したという。

 ただし、それが本当の理由だったかどうかは分からないとも付け加えた。自分の演技がひどく、製作側から「これは無理だ」と思われた可能性もあると冗談交じりに振り返っている。

◆待っていた続編は消滅 「幻のMJ」に
 MJは、単に物語から消されたわけではなかった。製作側は、その後の作品で登場させる構想を持っていた。

 しかし、MJの登場が想定されていた『アメイジング・スパイダーマン3』は結局製作されなかった。

 『アメイジング・スパイダーマン2』は、ジェイミー・フォックス演じるエレクトロや、デイン・デハーン演じるハリー・オズボーンら複数のキャラクターが新たに登場した作品だ。MJの出演シーンが削除されたこと自体は公開前から知られており、ウェブ監督も当時、物語を整理し、ピーターとグウェンの関係に焦点を当てるための判断だったと説明していた。

 シリーズは『アメイジング・スパイダーマン2』を最後に途絶え、ガーフィールド主演の第3作は実現しなかった。その後、ソニー・ピクチャーズはマーベル・スタジオと提携し、トム・ホランドを新たなスパイダーマンに迎えたシリーズが始まった。

 ガーフィールド自身は2021年公開の『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』で再びピーターを演じたが、ウッドリーのMJはスクリーンに登場していない。

 大好きだったキャラクターへの起用が決まり、実際に撮影まで済ませながら、出演シーンはすべて削除。そして本格的な登場を予定していた続編そのものも消滅した。

 12年以上を経て本人の口から語られた経緯は、『アメイジング・スパイダーマン』シリーズに残された「幻のMJ」の裏側を改めて浮かび上がらせている。

Text by 白石千尋