フランス熱波でクーラー争奪戦 販売直後に高額転売、出品者に中傷も
フランスのスーパーに並ぶ扇風機やポータブルクーラー(2019年6月)|Pack-Shot / Shutterstock.com
熱波に喘ぐフランスでは、各地でクーラーや扇風機が品薄となっている。そんな中、ネットのリユースショップでクーラーを高額転売する出品者に中傷メッセージが相次いでいる。
◆第三波襲来中
今夏のヨーロッパには熱波が何度も押し寄せている。フランスでは6月の第2波で、各地で最高気温の記録が相次いで更新された。7月最初の週末からは、第3波が襲来中だ。
未曽有の暑さに、人々は涼を求めて扇風機やクーラーを買い求め、全国的に品薄になっている。筆者が暮らすフランス北部の生活圏でも、6月の時点から品薄や売り切れが続いている。そんな中、第2波と第3波のはざまに、ポータブルクーラーと扇風機のセールを発表したのがディスカウントショップのLidlだ。Lidlは7月2日から、全国に1600以上の店舗で、扇風機とポータブルクーラー、総数20万台の売り出しを予告した。
その結果、当日は開店に先立つ未明から、全国のLidl店に人々が押しかけ、一部店舗で混乱が起きた。場所によっては店の扉が壊されたり、警察の介入も必要となり、混乱の様子は、SNSやメディアで大きく報道された。
◆フランスの「冷房」は日本のエアコンと違う
ところで、フランスで冷房設備を備えている住居は約22%と見られている。ただし、ここでいう冷房設備は、必ずしも日本で一般的な室外機付きの壁掛けエアコンとは限らない。
実際、筆者は長いフランス生活の中で、室外機を備えた壁掛け型エアコンのある一般住居をほとんど目にしてこなかった。「うちにはクーラーが一台あって」という話も、よくよく聞けば、排気機能のない冷風機を指していることが多い。もちろん、これは筆者が住むフランス北部の話であって、南部ではいくぶん事情が異なるだろう。
今回Lidlが売り出したのは、扇風機や卓上扇風機、ミニ扇風機、ポータブルクーラーなどの冷房関連商品だ。なかでも注目を集めたのはポータブルクーラーだった。だが、総数20万台を1622店超で販売する計算になるため、単純計算でも1店あたり約123台に過ぎない。さらに、20万台には扇風機なども含まれるため、ポータブルクーラーの台数はその一部に限られる。各店で争奪戦のような状況になった背景には、そういう事情もある。
◆翌日にはリユースショップで転売
7月2日早朝から、人によっては未明から店の前に並び、開店と同時に周囲の人をかき分けて売り場へ急ぎ、目当てのクーラーの入った段ボールを確保し、レジへ向かう。そうして手に入れられたポータブルクーラーだが、翌日にはすでに複数がネットのリユースショップに出品され、話題となった。
Lidlの販売価格は179ユーロ(約3万3000円)だったが、RTLによると、ネットでは300~700ユーロ(約5万6000円~13万円)で出品されていた。大きな利ざやが上乗せされている形だが、出品者らは出品直後から多くの問い合わせを受けたと話す。ちなみに、合法的に購入した商品の再販売自体は禁止されておらず、プラットフォーム側も売り手の価格設定を制限していない。とはいえ、需要の高まりにつけこむような転売行為に嫌悪感を示す人も少なくなく、出品者らは多くの中傷メッセージも受け取ったと明かす。
◆値上げは転売者のみならず
扇風機やポータブルクーラーの値上げは、転売者だけが行っているわけではない。消費者団体UFCク・ショワジールの調べによれば、ポータブルクーラーの価格は、6月1日から7月1日の1か月で22%上昇している。特に第2波の影響が大きかった6月21日から28日の間には急上昇した。ロウェンタの扇風機を例に挙げれば、フランス・アンフォによると、6月22日には99.99ユーロ(約1万9000円)で販売されていた同じ機種が、3日後の25日には149.99ユーロ(約2万8000円)になっていた。
◆今こそ賢い消費者に
フランスでは、消費者への価格表示などの条件を満たしていれば、需要に応じて販売者が価格を調整すること自体は合法である。だが、上述のフランス・アンフォの記事に寄せられたコメントを見ると、急な値上げを取り締まる法律がないことへの不満や、販売者のモラルを問う声が目立つ。「資本主義万歳」「自由主義万歳」といった皮肉交じりのコメントも複数見られた。
その一方で、「それが資本主義というものだろう」「いまさら騒ぐことではない」という立場からの意見もある。さらに、季節商品は需要が高まる前に買っておくべきだとして、「何事も早めに対処する賢い消費者にならねば」と説くコメントもあった。




