38歳メッシ躍動、秘密はアメリカ移籍? 新環境がもたらした好循環

アルジェリア戦で得点を決めて喜ぶリオネル・メッシ(6月16日)|Charlie Riedel / AP Photo

 リオネル・メッシのアメリカ移籍は、もし彼がアルゼンチンをワールドカップ連覇に導けば、まさに見事な一手だったと評価されるだろう。

 2023年にインテル・マイアミへの加入を決断したことは、すでにすべての関係者に利益をもたらしている。アメリカでのサッカー人気を高め、クラブにタイトルをもたらし、そして彼の輝かしいキャリアに新たな1ページを加えた。

 しかし、最大の恩恵を受けているのはアルゼンチンかもしれない。38歳となった今もなお、その能力は衰えを知らず、自身最後となる可能性があるワールドカップに臨んでいるからだ。

 アルゼンチン代表のリオネル・スカローニ監督は「レオ(メッシ)は本人が望む限り最高の選手であり続けるだろう。過去20年間、毎試合それを証明してきた」と語った。

 ティエリ・アンリは、アルゼンチンの初戦となったアルジェリア戦でハットトリックを達成したメッシについて、「まるで別次元にいるようだ」と評した。アンリはフォックス・スポーツに対し、「レオは本当に特別な存在だ。まったく別格なんだ」と語った。

 メッシはアルジェリアとの初戦でワールドカップ自身初となるハットトリックを達成し、大会歴代最多得点記録に並ぶ通算16得点を記録した。22日(日本時間23日)のオーストリア戦でも2得点を挙げ、現在は通算18得点で単独首位となっている。

 メッシは「身体的に良い状態を保ち、チームの力になれるよう、そして仲間を助けられるよう、できる限り最善の準備をしてきた」と語った。

 だが、それだけでは彼の現状を表現しきれない。

 前回のワールドカップが最後になる可能性を口にしていたにもかかわらず、メッシは再びアルゼンチン代表の中心に立ち、最大の創造性と攻撃力をもたらす存在となっている。この年齢になってなお、その立場を維持していることは決して当たり前ではない。

 フォックスのアナリスト、アレクシー・ララスはアルジェリアに3-0で勝利した後、「もう慣れているはずだが、アルゼンチンにおいてメッシこそがシステムであり、戦術であり、フォーメーションであり、アイデンティティーであり、そして心臓部であることを改めて証明する試合だった。目を見張るものだった」と語った。

◆アメリカ移籍後も衰えを見せないメッシ
 メッシは2023年、ヨーロッパサッカーの激しさを後にしてインテル・マイアミへ加入し、メジャーリーグサッカー(MLS)に大きな追い風をもたらした。

 彼は「サッカーとの向き合い方を変えたかった」と語っている。それはアメリカでの生活環境の変化を意味すると同時に、ヨーロッパのトップリーグと比べれば競争レベルが一段下がる環境へ移ることでもあった。

 しかし、サッカー界で過密日程への懸念が高まり、多くのトップ選手が燃え尽きの危険性を訴える中、メッシはこの移籍の恩恵を受けているように見える。バルセロナ時代の全盛期にはシーズン50試合以上を戦っていたが、アメリカではそれより少ない試合数にとどまっている。

 そして今大会序盤のプレーは、MLSで世界最高クラスのDFと日常的に対戦していなくても、その鋭さが失われていないことを示している。

 メッシは「私はプレーすること、競い合うことが好きだ。どこであろうと関係ない。今こうして再びワールドカップの舞台に立てていることは大きな喜びだが、準備の仕方はキャリアを通じてずっと変わっていない」と語った。

 すでに多くの人々が、バロンドールを8度受賞したメッシを史上最高のサッカー選手と評価している。しかし全盛期を過ぎた今もなお、彼はこの競技最大の舞台で新たな高みに到達している。

 2022年のワールドカップ制覇は、長年待ち望んだ悲願だった。バルセロナではチャンピオンズリーグ優勝や数々の得点記録を打ち立てながらも、アルゼンチン代表では国際大会であと一歩届かない状況が続いていた。

 35歳で5度目のワールドカップに臨んだ時、彼はパリ・サンジェルマン(PSG)に所属していた。そしてついに、唯一手にしていなかったトロフィーを獲得した。

 ここでもアルゼンチンは、自国の英雄がクラブレベルで一段階負荷の低い環境に移った恩恵を受けたのかもしれない。

 PSGはメッシ加入によるチャンピオンズリーグ制覇を期待していたが、フランス国内リーグはスペインリーグほど高く評価されていない。メッシは毎週のように極めて激しい競争にさらされる状況から離れていた。

 その結果、彼は2022年大会でワールドカップ自己最高のパフォーマンスを披露した。決勝での2得点を含む7得点を記録し、アルゼンチンはPK戦の末にフランスを破って優勝した。前回のロシア大会ではわずか1得点に終わっていた。

◆チームメイトにとって最大のインスピレーション
 4年後の今、メッシは再び戻ってきた。そしてさらなる成功を目指しているように見える。

 インテル・マイアミでもチームメイトであるロドリゴ・デ・パウルは、大会へ向けてメッシとともに入念な調整を続けてきたことを明かした。デ・パウルは「最高のコンディションで大会を迎えられるよう、私たちは自分たちを極限まで追い込んだ」と語った。

 一方のメッシは、テニス界のレジェンドであるラファエル・ナダルがトップレベルを維持し続ける原動力を描いたネットフリックスのドキュメンタリーシリーズから刺激を受けたという。メッシは「その点で私は彼によく似ている。常に良い状態でいたいと思っている。自分にできる限り、そして健康である限り、私はそこに居続けるだろう」と語った。

 チームメイトにとって、彼は何よりも大きな刺激となる存在だ。

 スカローニ監督は「レオが与える影響は本当に素晴らしく、言葉で説明するのは難しい。チームメイトたちは彼を神のように見ている一方で、近所の子供のようにも感じている」と語った。さらに「正直なところ、もう言葉が見つからない。彼が決めるゴール以上に、彼がチームメイトやファンに与えるものがある。彼がいなくなれば寂しくなるだろう」と述べた。

By JAMES ROBSON AP Soccer Writer

Text by AP