日英伊の戦闘機計画に潜む「英国リスク」 独仏ライバル計画頓挫でも残る不安

GCAPで開発が進む次世代戦闘機のイメージ(画像:防衛省

 日本、イギリス、イタリアが共同開発する次世代戦闘機計画「グローバル戦闘航空プログラム(GCAP)」を巡り、イギリスの資金拠出を不安視する声が海外で広がっている。英メディアは、日本側でイギリスへの不満が高まっていると報じた。一方、ライバルだった独仏主導の次世代戦闘機計画は事実上中止となる見通しで、GCAPには追い風との見方もある。ただ、海外メディアは「最大のリスクはイギリス自身にある」と警告している。

◆GCAPを揺るがすイギリスの予算問題
 英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)によると、イギリス政府は今後10年間の防衛投資計画(DIP)の策定を巡り調整を続けており、GCAPへの長期資金拠出も確定していない。計画ではGCAP向けに最大60億ポンド(約1.3兆円)の追加予算が検討されているものの、財務省内では巨額の費用超過を招いた高速鉄道計画「HS2」のような事態を懸念する声もあるという。

 FTは、財務省がGCAPの予算管理に直接関与する案まで浮上していると報じた。背景には、防衛省が大型装備計画でたびたびコスト超過を起こしてきたとの不信感があるという。

 GCAPはイギリス、イタリア、日本が2035年までの実戦配備を目指して進める大型プロジェクトだ。現在は各国企業による共同事業体「エッジウィング」が設計開発を担うが、長期契約の締結はイギリス政府の予算決定を待つ状態が続いている。4月には計画継続のための暫定契約が結ばれたものの、その期限は6月末に迫っている。

◆日本側からも不満の声
 こうした状況に、日本側のいら立ちも高まっているようだ。

 英紙テレグラフは、日本政府関係者の間でイギリスへの不満が広がっていると報じた。記事によると、日本側は当初、イタリアが計画推進の障害になる可能性を懸念していたが、実際にはイギリスの予算決定の遅れが最大の問題になっているという。関係者の間ではイギリスを「Ghost Ally(幽霊のような同盟国)」と呼ぶ声まで出ているとされる。

 GCAPの遅延は、日本にとって単なる開発スケジュールの問題ではない。航空自衛隊のF-2戦闘機は2035年前後に退役時期を迎える見通しで、GCAPはその後継機として位置付けられている。開発の遅れは将来の戦力整備計画にも影響する可能性がある。

 英誌エコノミストも、日本にとって2035年という期限は特に重要だと指摘している。同誌は、イギリスが長期契約に必要な資金を継続的に確保できるかどうかがGCAPの重要課題になっていると伝えていた。

◆ライバル計画は事実上頓挫
 こうした中、ドイツ、フランス、スペインが進めていた次世代戦闘機計画「将来戦闘航空システム(FCAS)」は、事実上中止となる見通しとなった。

 報道によると、フランスのダッソー社とドイツ側のエアバスとの間で主導権争いが続いたほか、求める性能の違いも埋まらなかった。フランスは核兵器運用や空母運用を重視した一方、ドイツは機動性を優先しており、開発方針そのものに隔たりがあった。

 FCASはGCAPと並ぶ欧州の有力な第6世代戦闘機計画とみられてきた。その消滅によって、GCAPの戦略的重要性は一段と高まるとの見方が出ている。ドイツのGCAP参加観測も浮上している。

◆ライバル消滅でも残る課題
 もっとも、ライバル計画の消滅がGCAPの成功を保証するわけではない。

 FCASは参加国や企業の対立によってつまずいた。一方、GCAPが直面しているのは予算と政治判断の問題だ。

 海外メディアの報道からは、GCAPの不確実要因としてイギリスの資金拠出能力を懸念する見方が浮かび上がる。ライバル計画の失速によってGCAPへの注目度は高まったが、その成否を左右するのは今後のイギリス政府の決断になりそうだ。

Text by 白石千尋