トランプ氏に認知症の兆候との指摘 専門家が懸念、暴言増加

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 ここ数週間、トランプ大統領の支離滅裂で理解しがたい暴言が大幅に増えている。これには大統領を支持してきた政治的右派からも「正気ではない」という意見が噴出。精神衛生の専門家からは認知症の兆候を示しているとの見方まで出ており、トランプ氏の職務遂行能力が疑問視されている。

◆いつもよりひどい?暴言続出で適性を疑う声
 トランプ氏は4月5日の朝、自身のソーシャルメディアで、ホルムズ海峡の封鎖をめぐりイランに対し「くそったれの海峡を開けろ、この狂った野郎ども、さもなくば地獄に落ちるぞ」と、いわゆるFワードを使って罵倒。7日には、「今夜一つの文明が消滅し、二度と復活することはないだろう」とイランに対し脅迫めいた投稿をした。12日には、対イラン戦争を批判したローマ教皇レオ14世を「犯罪者に弱腰で、外交政策もひどい」と非難。さらに自分をキリストのように描いたAI画像を投稿し、多くの人を困惑させた(画像は批判を受けて自ら削除)。

 英インデペンデント紙は、イランとの対立を背景に、最近のトランプ氏の暴言はいつもの大言壮語の域を超えているように見えると述べている。米ニューヨーク・タイムズ紙(NYT)は、最近のトランプ大統領の予測不能な行動と過激な発言は、彼が「狡猾な狂人なのか、単なる狂人か」という過去10年間にわたる議論に拍車をかけているとした。

 民主党関係者は、かねてからトランプ氏の精神的な適性を疑問視してきたが、今や退役軍人や外交官、外国政府高官からも同様の声が聞かれるという。そして最も注目すべきは、トランプ氏を支えてきた政治的右派からも「正気ではない」という見方が出ていることだとNYTは述べている。さらに、2月のロイター/イプソスの世論調査では、61%がトランプ氏の振る舞いが不安定になったと回答しており、国民の間でも今年80歳を迎えるトランプ氏の職務遂行能力が不安視されている。

◆検査を受けるべき 認知症の可能性も
 実は多くの精神衛生の専門家が、トランプ氏に何らかの精神的な問題があるのではと考えているという。その一人、臨床心理士のジョン・ガートナー氏は、2017年ごろからトランプ氏の「偏執的で妄想的」傾向や「悪性の自己愛」に懸念を示しており、2019年以降は判断力の低下や攻撃的な行動などを理由に、前頭側頭型認知症の兆候がみられると主張している(米デイリー・ビースト)。

 もっとも、アメリカには臨床検査を行わずに公人に対して精神疾患の診断を下すことは非倫理的であるという「ゴールドウォーター・ルール」があり、精神科医たちは個別の診察を行わずに特定の人物について診断を下すべきではないとされている。

 こうした制約があるなかで、イギリスの医学者二人が医学雑誌BMJへの寄稿記事のなかで、トランプ氏には緊急の臨床評価が必要だと主張している。大統領の健康状態は極めて良好と担当医師は述べているが、現在の懸念はその認知機能の低下に集中していると二人は指摘。公開情報のみに基づく評価は臨床診断としては限界があるとしつつも、大統領が下す決定は、時に何百万人もの生死を分ける結果をもたらすこともあり、実際の診察や検査は喫緊の課題だとしている。

◆擁護派は外交戦略を主張 ブレーキ役不在で状況変わらず
 最近の問題発言で、大統領の職務遂行不能を理由に権限を副大統領に移行する憲法第25条修正条項を発動する議論まで始まっているが、大統領擁護派は、最近のトランプ氏の言動は戦略だとしている。指導者が何をしだすか分からない狂人を演じることで相手に恐怖心を植え付け、交渉を有利に進める外交戦略、いわゆる「狂人理論」によるものだとし、トランプ氏は自分のしていることを正確に理解しているという説明だ。(NYT)

 プリンストン大学の歴史学者、ジュリアン・E・ゼライザー氏は、現在のトランプ政権には、トランプ氏を抑制することが自分の責務と考える助言者がほとんどいないと指摘。周囲は皆、床を見つめたまま黙り込んでおり、トランプ氏を止めるために裏で画策することさえしていないようだと述べている(NYT)。この状況ではトランプ氏に認知機能に関する詳細な検査を勧める側近はおらず、現在の制御不能状態は続きそうだ。

Text by 山川 真智子