米喫煙率ついに10%割れ 60年の戦いとそれでも残る“格差”
喫煙や電子タバコを禁止するロサンゼルスの標識(2022年6月)|TMP - An Instant of Time / Shutterstock.com
アメリカ疾病対策センター(CDC)によれば、2024年時点でのアメリカの成人の喫煙率が、ついに10%を切り過去最低となった。1964年に喫煙と重篤な疾患との関連性が指摘されたことをきっかけに、全米で禁煙対策が拡大。タバコ会社の激しい抵抗と戦いつつも、喫煙人口の着実な減少を達成したことは、公衆衛生上の偉大な成果だとされている。
◆戦争より死者を出した? 喫煙関連死は圧倒的
1965年のアメリカの成人の紙巻タバコ喫煙率は42.4%だったが、2024年には9.9%まで低下した。ウェブ誌『ヴォックス』によれば、ピーク時にはアメリカ人は一人あたり年間4000本以上(1日に半箱以上)のタバコを消費しており、医師でさえ約半数が喫煙者だったという。
1964年以降、2000万人以上のアメリカ人が喫煙関連で死亡しており、現在でも喫煙が原因で亡くなる人は年間48万人で、全死亡者の約5人に1人となっている。世界的に見れば、20世紀においてタバコは1億人の命を奪っており、第二次世界大戦での死亡者の総数を超えている。現代社会における予防可能な死因としては、たばこは他を圧倒的に上回っている。
◆禁煙キャンペーン実を結ぶ たばこ会社との戦いにも勝利
アメリカ人の喫煙率低下のきっかけとなったのは、喫煙の危険性を警告した1964年発表の公衆衛生局長官報告書だった。報告書は、喫煙と肺がん、慢性気管支炎、その他の重篤な疾患との関連性を指摘。さらに、喫煙者の死亡率が非喫煙者より70%高いことを明らかにした。(ABCニュース)
報告書は国中に衝撃を与えたが、タバコ業界は引き下がらなかった。内部文書によれば、タバコ会社は1950年代後半にすでに喫煙ががんを引き起こすと知っていた。しかしそれを隠蔽し続け、何十年もの間莫大な予算を投じたロビー活動で対抗。議会でニコチンには依存性はないと証言し、800件以上の訴訟においても一度も敗訴しなかった。(ヴォックス)
転機が訪れたのは、1998年。各州がタバコ関連の医療費負担を求めてタバコ産業を訴えたことから、和解協定が締結され、タバコ各社が州政府に2460億ドル(約39兆円)に上る和解金を支払うことになった。その後もタバコ業界に対する責任追及や訴訟は続いた。
禁煙キャンペーンは、パッケージの警告表示、テレビ・ラジオ広告の禁止、職場での禁煙法、増税など、複数の対策の組み合わせによって進められてきた。おそらく最も重要だったのは、喫煙が「ほぼ誰もがする行為」から「ほとんどの公共の場で禁止される行為」へと変わった点だ。社会規範の変化は、法律と同様の効果をもたらした。禁煙が進んだ結果、1964年から2014年の間に推定800万人の命が救われたとされる。
◆電子タバコの台頭? タバコ廃絶は道半ば
もっとも、9.9%という数字はあくまでも平均値であり、医学系オンラインジャーナル、NEJMエビデンス誌に掲載された論文によれば、喫煙者の割合は一次産業、採掘業、建設業、製造業従事者で高い。また、低学歴者、障がい者、低所得者、農村住民などに喫煙者が多く、全体の喫煙率が低下した今、喫煙はますます貧困や社会的弱者の問題になりつつある。
さらに注目すべきは、電子タバコの利用率だ。CDCの報告では、2024年には全体で7%と前年から大きな変化は見られなかったが、18歳から24歳の若年層では15%近くにもなっている。シカゴのアン&ロバート・H・ルーリー小児病院のマリア・ラーマンダー医師は、電子タバコの長期的な影響はまだ分かっていないと指摘。タバコの消費量が減少し収益を失っている大手タバコ会社が、依存性の高いニコチンを含む商品で、新たな顧客獲得を目指していると懸念を示した。(ABC)
肺疾患の予防を目指す非営利団体、アメリカ肺協会のトーマス・カー氏は、電子タバコが出る前は、タバコのない最初の世代の実現が期待されたが、残念ながらその進展は阻まれてしまったと述べ、タバコ根絶への道のりはまだまだ長いと見ている。(ABC)




