大幅改良のトヨタEV、米で販売急伸 1-3月1万台、78.8%増

Toyota Motor Sales, U.S.A., Inc.

 出遅れと見られていたトヨタの電気自動車(EV)が、アメリカ市場で販売を急伸させている。トヨタ自動車の北米法人が発表した2026年第1四半期(1〜3月)の販売実績によると、電動SUV「bZ」の累計販売台数は1万0029台となり、前年同期の5610台から78.8%増加した。

 3月単月では4019台を記録し、前年同月の1678台から139.5%増と大きく伸びた。単月で4000台を超えたことで、同モデルはアメリカのEV市場で一定の存在感を示す水準に達した。第1四半期の販売ペースを単純換算すると年間で約4万台規模となり、2025年の米EV販売ランキングに当てはめれば上位5〜10位圏に相当する。

 こうした動きを受け、米EV専門メディアのエレクトレックは、トヨタの電動SUVがアメリカで「トップセリングEVの一角」に浮上したと報じた。従来は販売面で存在感が限定的だったモデルが、短期間で上位クラスに食い込んだ点が注目されている。

 販売増の背景には、従来モデル「bZ4X」からの改良がある。初期型は航続距離や充電性能の面で競合に見劣りするとの指摘があり、2022年にはタイヤ脱落の恐れによるリコールも発生するなど、評価が伸び悩んだ。

 一方、改良が進められた現行モデルでは、航続距離が最大約314マイル(約505キロ)に向上するなど、基本性能が底上げされた。米メディアのレビューでも、航続距離や充電性能ではテスラなどに及ばないとしつつも、多くの利用者にとっては実用上十分な水準と評価されており、「日常で使えるEV」としての位置付けが明確になっている。

 さらに3月には、オフロード仕様の新グレード「bZ Woodland」が投入された。最高出力375馬力のパワートレインを備えた同モデルの追加により商品ラインアップが拡充され、販売の押し上げにつながったとみられる。

 アメリカのEV市場全体では減速の傾向も見られる。コックス・オートモーティブの資料によると、2026年第1四半期の新車EV販売は前年同期比で28%減少した一方、中古EVは12%増加している。さらに、フォードやゼネラル・モーターズ(GM)など既存メーカーもEV投資や生産計画の見直しを進めており、市場の成長ペースに陰りが見え始めている。こうした中で販売を伸ばしている点は、bZの動きの特異性を示している。

 トヨタはこれまでハイブリッド車を軸とした電動化戦略を進めてきたが、今回の販売増は、EVにおいても実用性と価格のバランスを重視したアプローチが一定の需要を取り込んだ可能性を示している。

 トヨタのEVはこれまで慎重とされてきたが、販売という形で結果を示し始めた。bZの伸びが一時的なものにとどまるのか、それとも本格的な転換点となるのか。今後の動向が注目される。

Text by 白石千尋