海外が読む日中関係の行方 鍵は米中、高市外交は「二重戦略」

出典:首相官邸ホームページ

 2月8日投開票の衆院選で、自民党は単独で316議席を獲得し、衆院で3分の2を超える議席を確保した。政党の獲得議席としては戦後最多となる歴史的圧勝で、第2次高市内閣が発足した。高市首相は20日の施政方針演説で、「責任ある積極財政」により強い経済を構築するとともに、強い外交・安全保障を確立していくと述べた。昨年首相に就任した直後のいわゆる「台湾有事答弁」以来、日中関係が悪化しているだけに、今後の政権の中国への対応に注目が集まっている。

◆中国の圧力が追い風に 海外識者が分析
 高市氏の「台湾有事答弁」は中国の強い反発を招き、第1次内閣期には外交摩擦に発展した。中国は経済的圧力や威圧的な言辞で対抗したが、高市氏は謝罪や発言撤回を行わなかった。海外の識者の間では、こうした姿勢が結果的に政権への信認を強めたとの見方も出ている。

 インドの地政学戦略家、ブラマ・チェラニ氏は、米政治専門紙ヒルのオピニオン記事で、中国の圧力作戦は高市氏の大勝を招いたと指摘。露骨な日本批判は、依存が威圧を招くこと、そして反発には強さが必要だと有権者に気づかせ、日本の政治を分断させるどころか、むしろ結束させたと論じた。

 学術系ニュースサイト『カンバセーション』に寄稿した東京大学社会科学研究所のセバスティアン・マスロー氏は、高市氏は安倍元首相の「積極的平和主義」の継続を使命としていると分析。中国の強硬姿勢は、結果的に自身の安全保障政策に対する国内の反対意見を抑える環境を生み出していると指摘している。

◆「戦後最も厳しい」 中国の脅威を明言
 20日の施政方針演説で高市氏は、日本が「戦後最も厳しく複雑な安全保障環境」に置かれていると述べた。中国については、「東シナ海・南シナ海での力や威圧による一方的な現状変更の試みを強化するとともに、我が国周辺での軍事活動を拡大・活発化させている」と指摘。中国、北朝鮮、ロシアをめぐる厳しい安全保障環境にあるとの認識を示した。

 経済面でも、レアアースなどを通じた中国の経済的威圧を問題視。経済安全保障の観点から、特定国への依存を減らすため同志国との連携を強化し、供給網の強靱化を急ぐ考えを示した。

◆米中会談見据えた「二重アプローチ」か
 一方で高市氏は、中国との戦略的互恵関係を包括的に推進し、「建設的かつ安定的な関係を構築していくこと」が一貫した方針だとも説明。「重要な隣国であり、さまざまな懸念と課題があるからこそ、意思疎通を継続しながら国益の観点から冷静かつ適切に対応する」と述べた。

 サウス・チャイナ・モーニング・ポスト紙によると、上海外国語大学日本研究センターのリャン・デグイ所長は、今回の演説からは当面、中国との関係改善に積極的に動く姿勢は見られないと分析。ただし、戦略的互恵関係に言及した点については、米中関係の行方を見据えたヘッジ(リスク回避)の意味合いがあると指摘する。さらに、演説では台湾に言及せず、非核三原則の見直しにも触れなかったことにも言及し、中国との関係を一定程度管理する意図がうかがえるとの見方を示した。

 高市首相は3月19日にワシントンを訪問し、トランプ大統領と会談する予定だ。トランプ氏も3月31日から4月2日の日程で中国を訪問する見込みで、習近平国家主席との会談が予定されている。リャン氏は、米中首脳会談の結果が不確実である以上、日本が単独で過度に対立的な姿勢を取るのは難しいと指摘。その場合、日本は抑止を維持しつつ中国との関係改善も模索する「二重アプローチ」を取る可能性があると分析している。(同)

 創価大学のリム・タイウェイ氏は、高市氏の「最優先」は3月の米大統領との会談を前に日米関係を強化することにあると指摘する(同)。

 スタンフォード大学フリーマン・スポグリ国際関係研究所(FSI)に寄せた寄稿で、筒井清輝教授は、中国は強硬な指導者として高市氏を尊重せざるを得ないが、突然融和的な姿勢に転じる可能性は低く、日中間の複雑な駆け引きは今後も続くと指摘。そのうえで、今回の圧勝により高市氏はトランプ氏との会談に向けた政治的資本を得たものの、最終的には米中関係の行方が日中関係を左右するとの見解を示している。

Text by 山川 真智子