高まる米露軍事衝突の可能性 強化されたシリアの防空網、トランプ氏の「保身」

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 混迷するシリア内戦を巡り、アメリカとロシアの軍事衝突の危険性が高まっている。シリアのアサド政権側が、首都ダマスカス近郊で化学兵器を使用したことを受け、米トランプ大統領はシリアへの大規模軍事攻撃を示唆。同政権を支援するロシアは、アメリカの攻撃に直接応戦する構えを一部で見せている。一触即発の事態はすぐそこまで迫っているのか? 米メディアでは「冷戦後最大の米露衝突の危機」とする論調が広がっている。

◆挑発の応酬も慎重姿勢崩さず
 シリアの首都ダマスカス近郊の反政府勢力の拠点、ドゥーマで今月7、8日、シリア政府軍による爆撃が行われ、そのさなかに投下された化学兵器により、子供と女性を含む少なくとも40人以上の市民が窒息死したと報じられている。この攻撃にロシア軍の関与があったという報道もある。
トランプ大統領はこれを受け、アサド大統領を「アニマル」と非難。「大きな代償を払うことになる」と、懲罰的軍事攻撃を示唆した。

 トランプ大統領はさらに11日、「ロシア、覚悟しな。それは素敵に、新たに、“スマート”にやってくる」と、ミサイル攻撃を示唆するツイートをし、物議を醸している。ABCニュースなどの複数の米メディアは、このツイートは、ロシアの駐レバノン大使がヒズボラ(親アサド政権のイスラム武装勢力)系テレビで行った発言に刺激されたものだと報じている。アレクサンドル・ザシプキン大使は「もし、アメリカの攻撃があれば、ミサイルを撃ち落とす。その発射元もだ」と、アル・マナールTVのインタビューに答えた。

 ただし、トランプ大統領は翌日になって「シリア攻撃の時期を言った覚えはない。すぐかもしれないし、全くそうではないかもしれない」とトーンダウン(ワシントン・ポスト=WP)。ロシア当局も、繰り返し報道陣にアメリカに報復するのかと聞かれたが、ザシプキン大使の発言を繰り返すことはなかったという。「クレムリンはアメリカとのつば競り合いは避けたいと考えているようだ」とABCは報じている。

Text by 内村 浩介