日本以上に女性の社会進出が遅れる韓国 「ガラスの天井指数」で6年連続最下位
世界で女性役員の登用が進むなか、韓国の同比率は依然として低い。韓国紙の中央日報によると、売上高トップ500社の女性役員比率は2.7%と、日本(上場企業で3.3%)を下回る。役員のほとんどが50代以上の男性だ。
◆6年連続で「最も女性が働くのに向いていない国」に
英誌エコノミストは今年2月、韓国がOECDに加盟国で算出可能な29ヶ国中、6年連続で「ガラスの天井指数」で最下位になったと発表した(日本は28位)。ガラスの天井とは、女性のキャリアアップを阻む障壁という意味で、性別や人種を理由とする見えない圧力に例えられる。調査を行った同誌は、「男女の賃金格差」「管理職の女性比率」「国会議員の女性比率」などの10指標からOECD加盟国をランキング化。韓国を「働く女性にとって最も悪い国」と位置付けた。
役員や管理職など上位職に占める女性の割合では、韓国は10.5%と最下位だった(OECD平均:31.8%)。男女の賃金格差は29ヶ国中最も大きく、女性は男性に比べて36.7%ポイント少なかった。女性家族部による調査でも、女性役員が一人もいない企業は67.2%にのぼる。韓国内では、この現状について「“ガラスの天井”を越えて“コンクリートの天井”である」との批判も出ている。
◆女性管理職が少ない理由「そもそも対象者が少ない」
上位職に女性が占める割合が低い理由に「家父長的な社会の雰囲気」がしばしば挙がる。また、「男性中心の組織文化の中で(女性が)生き残る難しさ」もあるようだ。東亜日報によれば、公企業の管理職では業務能力のほかに営業力やリーダーシップ性などが重要視される。しかし女性幹部は少数でほとんどは研究職に集中しているという。同紙は、本人の業務能力だけで評価される研究職を除きそれ以外の能力が必要とされる部署で女性が昇進するのは容易でないとした。
また、ある銀行の行員はそもそも女性の数が少なかったことを理由に挙げる。「昔は女性入行者自体が少なかった。少数で働いていた女性職員たちもほとんどが退職し、高い役職ほど女性が少ない」(朝鮮日報)とし、そもそも昇進の対象者がいなかったと説明した。
◆女性役員の登用に取り組み始めた韓国
世界のグローバル企業が人種や性別を超えて役員人事に取り組むなか、近年の韓国も変わりつつある。今年1月、韓国企業の主要30社における女性役員昇進者の割合が初めて3%を超えたのだ。2014年の調査時には1%台だった女性役員率は文在寅(ムンジェイン)政権の積極的な女性登用政策が功を奏したのだろうか。役員に昇進した1968人のうち65人(3.3%)は女性だ(朝鮮日報)。
グループ別ではサムスンとLGエレクトロニクスが役員人事で最も多くの女性を登用した。サムスン電子は昇進者221人のうち女性役員は7人(3.2%)で、ほとんどが40代だ。一方、LGは157人のうち7人(4.5%)の女性役員を輩出した(女性新聞)。
しかし、女性役員を無理に登用することについて男性差別に当たるのではないかとの指摘もある。ある男性職員からは「飛び級で管理職に昇任した女性上司にだれが従いたいのか」といった不満の声が挙がった。また、女性職員の間でも「無理に女性役員を採用しても結果が伴わなければ、かえって仕事ができる女性が被害を受けるのではないか」といった懸念もあるようだ(東亜日報)。
モルガン・スタンレー・キャピタル・インターナショナル(MSCI)によると、取締役のなかに女性がいる企業は業績も良いという調査結果が出ている。女性の活躍を推進する国際組織ウィメン・コーポレート・ディレクターズ(WCD)韓国支部の代表は今後の企業のあり方について「女性の役員を増やして理事会(日本でいう取締役会)の能力を強化しなければならない」と述べ、女性役員の登用を促した(中央日報)。
わずかながら効果が出始めた韓国の女性雇用政策。果たして女性役員比率最下位の汚名返上となるか。