発展を遂げる人工知能 新冷戦の兵器に
著:Jeremy Straub(ノースダコタ州立大学 Assistant Professor of Computer Science)
現在の地政学的な情勢は、1980年代と混同されてもおかしくない状況である。アメリカとロシアが内政干渉を受けていると相互に告発している。ロシアがアメリカの反対を押し切って領土を拡大し、軍事衝突の懸念が高まっている。
第二次世界大戦後の冷戦時代を通して、各国は発展した技術に基づいて武器の開発・製造を続けている。冷戦時代には、核ミサイルが選ばれてきた。今日では武器はソフトウェアで、コンピュータシステムへの攻撃にも、現実界を標的としての攻撃にも使われている。
ロシアでは人工知能の重要性が再び論じられるようになっているが、これには全うな理由がある。ソフトウェアの発展に伴い、人工知能は人間よりも多くのデータに基づき、より早く決断を下すことができるようになるだろう。ドローン・自動運転車・サイバーセキュリティに勝るとも劣らない多様なAIの活用法を研究する者として、私は世界がAIによって新たな冷戦時代に向かっているか、もしくはもう突入しているかもしれないと懸念している。そしてその懸念は私だけのものではない。
◆現代の冷戦
1940、50年代の冷戦と全く同様、両国がそれぞれ技術発展で相手に遅れを取ることを恐れる理由がある。モスクワ近郊にある戦略ロケット専門学校(Strategic Missile Academy)で近頃開かれた会議で、ロシア大統領のウラジーミル・プーチンはAIがアメリカ-ロシア間のバランスを取り戻し、パワーシフトを起こすための手段となりうると提言した。アメリカがロシアの10倍もの資金を投じてきたため、この力の不均衡が生じたと述べている。ロシアの政府系メディアであるロシア・トゥデイ(RT)は、AIが「ロシアが防衛面でアメリカを打ち負かす鍵である」と報じた。
この言説は、アメリカとソビエトが地球の全人口を何度も全滅させられるほどの核兵器を作り上げた冷戦時代のものとそっくりである。この軍事競争は、相互確証破壊という概念を作り出した。どちらの国家も、自国が破壊される恐れを無視して戦争を開始することができない。代わりに、双方が武器を保持しながら、小規模な軍事衝突や政治的紛争によって間接的に争った。
今日では冷戦の終了から30年以上が経ち、アメリカとロシアは数万発の核兵器を廃止してきた。しかしながら両国間の緊張は高まっている。現代の冷戦にはサイバー攻撃と核兵器による同盟国での紛争への関与が含まれるだろう。それはすでに起こっている。
両国は相手国の外交官を除名した。ロシアはクリミアの一部を併合した。トルコ・シリア間の国境での戦争は、アメリカとロシアの「代理戦争」とさえ呼ばれている。
アメリカ・ロシア両国をはじめ、多くの国が未だに核兵器を保持しているが、大国によってそれらが使われることは現在でも非常に考えにくい。しかし最近、それらの国による核兵器の使用に対する社会的関心が高まっていると報告されている。