「週160円の増収」を“自慢”して炎上 米下院議長の「世間知らず」

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 昨年12月、アメリカで可決された税制改革法がいよいよ今年1月より施行された。アメリカでは同法施行後、2月に初めての給与(ペイチェック)を手にしたという人も多いだろう。民主党が猛反対した同法案に関しては人口の少数を占めるアッパークラス(上流階級)が減税され、ミドルクラス(中間階級)はかえって税金が増える場合もあるなど、米国民の大多数からかなりの悪評を呼んでいる。

 そんな中で、同国下院のポール・ライアン下院議長(ウィスコンシン州選出、共和党)が税制改革法施行後、手取り額が増えて喜んだ女性」についてツイッターに投稿。自慢するつもりが、かえって大きな批判を浴びる結果となった。

◆週1ドル50セントの収入増は「喜ばしいこと」
 CNNの2月3日付報道によると、ライアン氏は投稿で、「ペンシルバニア州ランカスターの公立校で働く秘書は、週に1ドル50セント(約162円)手取り額が増えて嬉しい驚きを味わった。彼女はこれ(増額分)でコストコの年間会員費をカバーできると言った」と述べた。

 ライアン氏にとって週1ドル50セントの給与アップは、税制改革法を成功と捉える「自慢」だったらしい。週1ドル50セントということは、1年52週で78ドル。確かにコストコの年間会員費(60ドル~)は支払えることには間違いないが、ジュースを1本買えばほぼ飛んでいってしまうその小銭を1年間コツコツ貯めなければならないことになる。

 しかし、ライアン氏はその後、発言に呆れた人々からツイッターで容赦ない批判を受けて投稿を削除してしまった。
 
◆下院議長の「世間知らず」発言で民主党から猛反発
 ライアン氏の投稿に対し、ブライアン・シャッツ上院議員(ハワイ州、民主党)はツイッターで、「(ポール・ライアン議長の)1ドル50セントに関する投稿はPRの間違いではない。本当に彼ら(共和党員)が思っていることだ」と発言。

 またエリック・スワルウェル議員(カリフォルニア州、民主党)はツイッターで、「もしあなたが『共和党の税金詐欺』で週に1ドル50セントしか手にしていないなら、経済が良くなったとは言えない」と語った。

 またライアン氏はネット上の一般市民からも「1ドル50セントあれば、買いたいといつも思っていたバナナが毎週買える!」と嘲られたり、「なぜポール・ライアンは自分の給与がいくら増えたのか公表しないのか」「ポール・ライアンの世間知らずの度合いには毎度驚かされる」「税金控除項目が減ったので、かえって税金が上がる!」と厳しい批判を受けたりした。

◆法通過後、支持者からライアン氏へ多額の寄付金
「週に1ドル50セント手取り額が上がった」と発言した当の公立校秘書の女性は、2月3日付CBSニュース(電子版)のインタビューで、「ライアン氏が自分のコメントを取り上げたことに驚いた」と話し、「私の前と後にコメントした人は数百ドル上がったと話していて、私は1ドル50セント上がっただけ」「彼(ライアン氏)は記事全体を読まなかったのかもしれない」とコメントした。

 さらに「1ドル50セントは1ドル50セントでしかない。(中略)まあ、下がらずに上がっただけでも良かったわ」と冷ややかな態度だった。どうやら蓋を開けてみると、ライアン氏が言ったような「嬉しい驚き」という反応でもなかったようである。

 一方、1月24日付のハフポスト(電子版)によると、ライアン氏は税制改革法の通過直後、共和党支持者のビリオネアから50万ドルという多額の寄付金を受け取っており、これが「お礼」ではないかと疑われているという。2018年の中間選挙で、ライアン氏がこの件について民主党から攻撃を受けるのは間違いなさそうだ。

Text by 川島 実佳