深刻になる韓国の若年失業 文大統領の公務員拡充が裏目との批判も

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 韓国の若者は世界的な株価好調の恩恵を受けていないらしい。2000年以降最悪となっている韓国の雇用情勢は日本のメディアでも度々取り上げられている。昨年発足した文在寅(ムン・ジェイン)政権は公務員採用の拡充など公共部門に重きを置いた雇用政策を展開しているが、雇用率は改善していないようだ。

◆過去最悪となってしまった若年失業率
 朝鮮日報によれば昨年の失業者数は102万8000人であり、統計調査方法が変わった2000年以降最も多い数字となっている。100万人を超えるのは史上2度目だという。

 特に酷いのは15歳〜29歳の若年者失業率である。韓国統計庁によれば2017年の失業者は43万5000人で過去最悪となってしまった。若年失業率は9.9%で4年連続の記録更新である。世界金融危機のときですら8.1%だったのだから現在がいかに過酷な状況かが推測できる。

 改善する兆しが見えない雇用環境に韓国の若者たちからはあきらめに近いような声が聞こえてくる。韓国の毎日経済新聞は「四年制大卒の賃金格差が大きい。むやみに中小企業に入るのも怖い」とする専門学校生の実情を伝えた。韓国では四年制大学卒業者の失業率は昨年から0.2%ポイントの改善を見せたが、専門学校卒は統計以来最も高い水準となっているのだ。悪化した背景には、月給200万ウォン(約20万円)に満たない環境から転職する若者が増加したためとされる。

 しかし、先が見えない現状に不安を感じて求職活動を試みても、簡単に再就職先が見つからないのが今の韓国である。昨年は求職活動を半年以上続けている長期失業者が14万7000人にも達した。昨年より1万4000人増加したのである。

◆失敗した公務員採用枠の拡大政策
 怒りの矛先は徐々に文大統領に向き始めた。文氏は雇用創出政策として80万人に及ぶ公共部門の採用拡大を図ったが、地方公務員に求職活動が集中しすぎてしまい、結果的に失業する若者が増えてしまったのだ。朝鮮日報は「公務員だけを増やす雇用対策では根本的な青年失業の解決にはつながらない」とする経済専門家の意見を紹介した。韓国各紙を見比べるとむしろ「文大統領の政策がさらなる失業者を生んでいる」との見方が大勢となっているようだ。

 ところが韓国政府はあくまで「構造的な問題だ」として聞く耳を持たない。このほか2016年から施行されている定年延長法が若者の雇用環境悪化に拍車をかけているとの指摘もある。壮年層の雇用を強制した結果、60代の求職活動まで活発化し若者の雇用を奪っているというのだ。現在韓国経済は回復に向かっているとされるが、若年層の雇用改善なくして真の経済回復は望めないだろう。

 一方、空前の人手不足が到来している日本。すでに海外に就職先を求める韓国人も増え始めているとされる。安倍政権も海外労働者の受け入れに積極的な姿勢を打ち出していることから、日本で仕事を探す東アジアの若者はますます増加する。公共部門の拡充も大切かもしれないが、将来の韓国社会を担う若者が海外に流出しては元も子もない。

Text by 古久澤直樹