分析:共和党はトランプ政権下で生き残れるのか?
【ワシントン・AP通信】 伝統ある共和党本流はドナルド・トランプ氏の大統領任期を生き延びられるのか?
1年前のトランプ氏の目覚ましい選挙勝利以来、共和党議員を常に苦しめてきた問題が、ここにきて新たに顕在化した。先月24日に、アリゾナ州選出の上院議員ジェフ・フレーク氏が議会からの引退を発表したのだ。共和党内で最も一貫して大統領批判者をくり広げてきたフレーク議員だが、来年の選挙では、トランプ大統領の盟友らが支援する候補が最低1名は対抗馬として出る見通しで、非常に厳しい挑戦をつきつけられていた。
「今の共和党内の気風の中では、私のような共和党員は党内に居場所がないようです」とフレーク議員は発言した。彼は、移民問題や、オバマ政権が打ち出したキューバとの緊張緩和政策において、民主党と歩調を合わせて問題に取り組んできた保守派の議員だ。
共和党内での自分の未来に対するフレーク議員の悲観的な評価は、これから中間選挙に突入する共和党の中に渦まく不安感を言葉に表したものだ。これまでトランプ大統領は、現職の上院議員の一部にまったく敬意を払わず、フレーク議員や上院与党のトップであるミッチ・マコーネル議員に対して公然と論争をふっかけてきた。ホワイトハウスの元上級顧問スティーブ・バノン氏を筆頭とする熱烈な大統領サポーターの一部は、ワシントンの共和党主流派を支えるどころか、むしろ彼らの挑戦者である共和党予備選の対立候補を積極的に支える構えを見せている。
トランプ大統領の支持グループであるグレート・アメリカ・アライアンスの上級顧問アンディー・スラビアン氏は、フレーク議員の引退は大きな潮流の一部だと述べた上で、「フレーク議員のような人物を支持する共和党主流派に対し、『あなたたちの時代は終わりだ』という新たな警告をつきつけるでしょう」と語った。
しかし正確に言えば、共和党内の分裂は決して目新しいものではない。長年にわたって共和党は、穏健派の経済界寄りの派閥とあわせ、増加を続けるポピュリストや民族主義者のグループとの折衝に苦心してきた。最終的には、まさにその勢力こそが、トランプ氏の政治的台頭の火付け役となったのである。トランプ氏の大統領選出により、共和党はホワイトハウスと議会の両方の支配権を得たわけだが、それによって派閥間の溝が埋まったかと言えば、まったくそうではない。いやむしろ、かつての民主党員であり、イデオロギー的に保守の原則や共和党幹部たちに縛られないトランプ大統領は、共和党を支持する何百万という有権者や、彼らを代表してワシントンに送られてきた議会幹部たちとの間に生じた溝を、さらに深めてきたと言える。
ピーター・ウェーナー氏は、ジョージ・W・ブッシュ政権下のホワイトハウスに勤めたトランプ批判者である。「保守主義と共和党のスピリットを賭けた戦いが、現在行われている」と彼は述べ、ひとりでも多くの守旧派の共和党議員が、彼らの原則のために逃げずに踏みとどまって戦うよう促した。にもかかわらず、この戦いは最終的には負け戦かもしれない、との見通しを彼は否定しなかった。
「もしもこの党が、ドナルド・トランプ大統領とスティーブ・バノン氏によって仕切られるのであれば、多くの党員はもはや、そのような党の一員として居つづけたいとは思わなくなるでしょう」ウェーナー氏はそのようにも語った。
主流派への逆風が吹き荒れる中、ポピュリスト判事のロイ・ムーア氏が、9月、アラバマ州の共和党予備選挙で現職の上院議員ルーサー・ストレンジ氏を破り、党内の反主流派勢力に新たな勝利をもたらした。ムーア氏は共和党内でも異端視されており、来年彼が上院に登院した際には、上院共和党トップのマコーネル議員に素直に従うかどうか、非常に疑わしい。
先月24日に上院議会でフレーク議員の引退コメントが出たのは、同じように再選を断念したテネシー州選出の共和党員ボブ・コーカー上院議員が、「トランプ大統領は虚偽と中傷をもって米国の土台を切り崩している」と宣言した数時間後だった。またその1週間前には、ジョン・マケイン上院議員が、「中途半端で薄っぺらなナショナリズム」が幅をきかせる風潮を嘆き、ブッシュ氏も、「我々の公共生活の中にあるいじめや偏見」に対して遺憾の意を示した。両氏とも、名前こそ出さなかったが、それぞれ暗にトランプ大統領を批判したものと見られている。
はっきり口には出さないが、多くの共和党当局者が、政策と気風の両面で、トランプ大統領が党を牽引してゆく方向に深い懸念を抱いてきた。トランプ大統領は、移民政策において共和党を保守強硬路線に引っ張る構えを見せておきながら、蓋をあけてみれば、親とともに子供時代に違法にアメリカに入国した若年層が引き続き国内に留まれるよう、民主党と取り引きする展望を示している。大統領はまた、太平洋地域の主要な貿易協定から米国を撤退させ、カナダとメキシコとの長年にわたる貿易協定を撤廃する構えすら見せている。また彼は、白人ナショナリストからの広範な支持を得ている。この傾向は、今年の夏、バージニア州シャーロットビルで起きた白人優位主義者とそれに反対するデモ隊との衝突に関し、大統領がどちらつかずの反応を示した直後から顕著になった。
だがそれでも、トランプ大統領のツイートや無神経発言を時々批判することを除けば、大部分の共和党当局者はひたすら沈黙を保っている。理由のひとつは、大統領の支持者を敵にまわすことを恐れてのことだ。一部の共和党議員は、フレーク議員やコーカー議員と同様、競合区での再選を目指さずに政界から身を引くことを表明した。
ミシシッピ州選出の元・共和党上院院内総務のトレント・ロット氏は、共和党が政権を取っているにもかかわらず党が有権者との公約を守れていない現状を非難し、党内に蔓延する大きな不満を代弁した。 「オバマケア」を廃止しようとする努力は、ぶざまにも失敗した。多くの議員が、税制改正案に関する現在の議論は、中間選挙前にこの問題の法的解決を見るための最後かつ最良のチャンスと見ており、もし仮に法案が成立しない場合には、共和党は莫大な損失をこうむると予測する。
しかしロット氏はまた、保守派にとっての良策はトランプ氏の共和党に留まることであり、そこを去るのは得策ではないないとも述べた。
「党内に居場所がないと不平を言うのではなく、各自がそれぞれ、自分で自分の居場所をつくる努力をすべきです」と彼は語った。
By JULIE PACE
Translated by Conyac