“家造り”が楽しいオーストラリア人 1年間にリフォームした人6割 その背景は?
オーストラリアではここ15年ほど、ホームリフォーム熱が続いている。単なる家の修理から始まり、今ではより住みやすい楽しい家造りへとホームリフォームを一つの余暇として楽しむ人が増えている。そのトレンドを後押ししているものは何だろうか?
◆ホームリフォーム熱の社会的背景
メルボルンに基盤を置くロイ・モーガンリサーチが1月に行った調査によると、2016年の12ヶ月間にオーストラリアで持ち家を何らかの形でリフォームした人は62%に上り、これは3年前の2013年より5%増えているとのことである。リフォームの内容は家の修理やペンキ塗り(オーストラリアの家の天井や壁はほとんどがペンキで塗られている)などが主だが、内装を改造した人も31%となっている。
このように、オーストラリアでホームリフォームが流行っている背景には、オーストラリア人の家に対する強い思い入れがある。そしてその強い思い入れは、白人文化の根幹をなす個人主義がマイホーム主義につながったことから来ていると考えられる。また労働時間も日本と比べると短く、有給休暇もしっかり取り、さらにはリフレッシュ休暇も10年以上働くと3ヶ月くらい取れる企業もある。こうした労働条件の良さが、余暇の時間を作り出し、ホームリフォームを可能にしているのではないだろうか。
◆テレビ番組「ザ・ブロック」の影響
さらにこのトレンドを後押ししたのが、「ザ・ブロック」というテレビ番組だ。ブロックとは「区画」の意味で、この番組ではシドニーやメルボルンで一つの区画を選び、その区画内にある中古の4~5軒の家やアパートを4組から5組のペア(夫婦、親子、兄弟、友達など)が修理し、最後にオークションにかける。そして、そのオークションで最も高く売れた物件のペアが優勝するというものだ。
「ザ・ブロック」は2003年に始まり2年間で終了となったが、2010年に復活。その後、今日まで毎年1回、約3ヶ月を掛けて放送される。この番組に参加するのはかなりの体力を必要とするため、参加者は20代、30代の若い世代が多い。それにより、同世代の人に多くの影響を与え、番組に参加した人の中には、プロのリフォーム士になった人もいる。
◆安い中国製品と巨大なホームセンター
「ザ・ブロック」と並んで、ホームリフォーム熱を支えているのが、安い中国製品の流入である。そうした製品を取り扱うホームセンターが各地に作られており、その中でも独占に近い地位を占めているのが「バニングズ」というホームセンターである。オーストラリア全国で324店舗あり、一つの店舗の規模がかなり大きい。
最近できた一番大きな「サウス・バーモント店」は面積が16,550m²で東京ドームのグランド面積13,000m²よりも少し大きいことになる。店舗内には主要部、木材部、ガーデン部があり、主要部では日用品や建築材料など、家のリフォームだけでなく家そのものに必要な製品を売っている。
20年ほど前までは、オーストラリアの経済も今ほど発達しておらず、家のリフォームに使う材料費も人件費も高かったため、「ハンディーマン」と呼ばれる人たちが、主に家の修理をやっていた。ところが、最近では中国からの安い製品のおかげで、より多くの人がホームリフォームを余暇の一つとして楽しめるようになったのである。