「南方週末」記事差し替え事件への抗議運動加熱 その影響は?

「南方週末」記事差し替え事件への抗議運動加熱 その影響は? 中国・広東省の週刊紙「南方週末」の記事差し替え事件に対する抗議運動が勢いを増している。「南方週末」本社前で行われた抗議運動へは学生からシニア層まで数百人が参加しており、他のメディアやブログでも知識人や映画スターらによる支持の表明が相次いでいる。政府による報道規制はこれまでも反感をかっていたが、今回のように人々が公の場で抗議をするのは異例だ。

 フィナンシャル・タイムズ紙は、事の発端となった「南方週末」の記事改ざんの様子から、これまでの報道後に圧力をかける規制から、事前に圧力によって規制する方法に変化してきていると分析した。また、記者らによる抗議活動に関して、国民が一斉に国の権力者に向かって改善を要求する深刻な騒動となってきたとも述べた。こうした中、発足したばかりの習近平体制が、時代の流れに逆らっていくのか、前進するのかを注目している。習氏に政治改革への期待を寄せる向きもあるものの、氏の表現は周到なまでにあいまいであり、今後の姿勢は明らかではない。
 一方、南方週末の記事改ざんを指示したとして記者らが退任を迫っている広東省宣伝部長・庹震氏に関して、ニューヨーク・タイムズ紙は、「政府が築きあげてきた信頼を一晩で台無しにした」と指摘した。各紙は同氏に取材を求めているが未だ連絡がつかないという。

 ウォール・ストリート・ジャーナル紙は、南方週末に対する支持が広がっている様子を取り上げている。中国版ツイッター「微博」では、南方週末の本社前で行われているストライキに参加する人々の様子が写真付きで数多く投稿されているという。一般人だけではなく、普段は政治的コメントを避けている有名人による発言も出ているようだ。女優ヤオ・チェン(姚晨)さんは3100万人以上のフォロワーに対して、故ソルジェニーツィン氏の言葉を引用し、「一片の真実の言葉は世界全体より重い」と述べた。
 また、複数のメディアもそれぞれのソーシャルメディアや公式サイト上などで連帯を表明している。「新浪」のTianjin Newsは、一面に掲載した各記事の見出しの最初の漢字をつなぐと「南方週末頑張れ」と読めるエールを送ったという。さらには、共産党機関紙の「人民日報」までもが、時代に即したプロパガンダをどう行なっていくかが問われていると述べ、 安定した社会では「支持を取り付けるために健全な世論環境に依拠しなければならない」とまで論じたという。

 なお米国は、この騒動に関して、中国が目指している近代的な情報化社会や経済と、報道の検閲は両立しないだろうとコメントしている。習近平氏はこうした動きにどう対処するのか、注目が集まっている。

Text by NewSphere 編集部