バーゼルⅢ規制(銀行の自己資本規制)緩和の影響は?
6日、26ヶ国の銀行規制当局で構成されるバーゼル委員会は、国際銀行の健全性を保つための自己資本規制であるバーゼルⅢ規制について、流動資産の定義を緩めると発表した。また2015年1月1日とされていた達成期限について、銀行には2019年1月1日までの猶予が与えられることとなった。
2010年のバーゼルⅢ規制は、リーマンショックのような混乱時においても銀行が、預金流出や信用格付けの格下げなど30日分の危機を乗り切るために、手元に十分な現金あるいは国債、その他即時処分可能な(銀行中央に直接管理され、担保に充てられたりしていない)流動資産を持つことを要求していた。緩和により、銀行は普通株や高格付け社債などをも(割り引いて計算されはするが)流動資産額に含めることが可能になる。米国やアジアなど、すでに要件を満たしている銀行も多いが、主にヨーロッパの銀行が緩和による資金調達コスト減の恩恵にあずかる。これを受けて、7日にはフランスやドイツなどの銀行の株式が反発した。またウォール・ストリート・ジャーナル紙は緩和により市場に新たな需要が導入され、銀行はより熱心にその種の債券を保有しようとし、債券価格は上昇。利回りやスプレッド、比較的低リスクな社債の格差は減る、と予想する。
緩和の決断は、規制が過酷すぎて貸付能力に支障をきたすとの銀行界の主張、および欧州ソブリン危機が一段落したとの観測を受けてのこととされ、バーナンキ米連邦準備理事会議長やドラギ欧州中央銀総裁など含め、満場一致で承認された。ニューヨーク・タイムズ紙は、金融機関を楽にする意図ではないとのイングランド銀行キング総裁の発言を伝えつつ、規制の厳格過ぎる適用は成長を傷つけかねないと認めての公認譲歩だと評している。
一方で同紙は、脆弱性が少ないと認識される銀行はより安く資金を調達できるとの主張も紹介。米国の銀行が一般的に欧州の銀行よりも早く危機から回復したのは、米国規制当局が彼らに新たな資本調達を強いたためだという。緩和された自己資本要件を満たしても銀行の信用が増すかどうか、疑問を含む論調である。フィナンシャル・タイムズ紙も「銀行の流動性基準を遅延させ希釈させることは、自らのリスクプロファイルを増やします」「たいてい、間違った賭けのツケを払わされるのは納税者です」などとの、緩和に反対する意見を紹介した。