350ml缶ビールを週に9本以上飲むと脳の海馬が萎縮する? 英研究
ほどほどにお酒を飲むだけでも、脳の一部が縮小してしまうなど悪影響が見られることがイギリスの研究により明らかとなっている。大量の飲酒は健康に害があるのが周知の事実であった一方で、ほどほどであればアルコールの摂取は健康にむしろいいものとも思われてきた。同研究はそうした見方を覆すものとなっており、飲酒による脳への悪影響についてこれまで以上に注意喚起している。
◆多量の飲酒は脳の萎縮を招く
英医師会誌「ブリティッシュ・メディカル・ジャーナル(BMJ)」の発表された論文において、アルコールの消費が脳の構造と機能に関してどのような影響をもつかが調査されている。調査では、550人の男女が対象となり、一週間のアルコールの摂取量が計られ、30年間(1985年〜2015年)に渡る脳の認識機能が継続的に計測された。
お酒を多量に飲む人については予想通りの結果が観測された。計測された30年間に渡りアルコールの消費量が高かった者(一週間に30ユニット以上の飲酒量)には、海馬の萎縮が高い確率で起こったのである。なお、お酒の1ユニットは、純アルコールの10ミリリットルもしくは8グラムを意味するといい、標準的なアルコール度数5%のビールであれば、200ミリリットルに当たる。海馬とは脳の記憶や空間学習能力に関わる部位である。また、海馬の萎縮に加え、言葉の流暢さにも衰えが早く観測されたという。
◆ほどほどでも脳に悪影響をもたらす?
ただ海馬の萎縮は驚くべきことに適量を守って飲酒する人の場合でも同様に観測されたのである。この研究では適量を守って飲んだ人は一週間に14〜21ユニットの飲酒量とされているが、全く飲まない人と比較すると3倍もの確率で海馬の萎縮が起こったのだという。
こうした研究結果によると、どうやらこれまで適量と思われていた量を飲んでいても、アルコールの脳への悪影響は避けられないようだ。一方で、イギリス紙のガーディアンの取材に答えた英のブリストル大学で認知症の神経学を教えるエリザベス・クルサード氏は、この研究はアルコールが脳に損害を与えるということを証明するものではないと警告している。
◆アルコールとのつき合い方
アルコールの脳への悪影響が事実であるならば、我々のライフスタイルも再考を迫られるだろう。イギリスの保健医療省が発表した「新アルコールガイドライン」は男女両方に対して、毎週最高でも14ユニット以下の飲酒を提言している。この量は350ミリリットルのビール8缶に相当する。パブ文化が盛んなイギリスにおいてこの量は非現実的とも見えるかもしれないが、BMJの発表した論文はこのガイドラインの妥当性を裏付けているだろう。
こうした研究結果は、毎日お酒を飲む習慣がある人にはショックな結果だろう。これからは大酒飲みだけでなく、習慣的に飲酒をする者も自身の脳の健康に気をつけて飲酒量に注意したいものだ。