ブルー・プラーク制度、日本でも普及させるべき 本家イギリスでは驚きの現象も
2017年6月、「軽井沢ブルー・プラーク」制度が発足した。これは、「軽井沢の避暑地文化を発信する」ため、町内の歴史的建造物などに青い円盤状の銘板を設置するものだ。ブルー・プラークは日本の地域経済にどのようなインパクトを与えるのだろうか。
◆イギリス生まれのブルー・プラーク
そもそもブルー・プラークとは、歴史上の偉人にまつわるロンドンの建造物を保存するために1866年から始まった、イギリス発祥の制度だ。現在は「イングリッシュ・ヘリテージ」が設置場所を選定・管轄している。
その基本的な選定条件は、(1)偉人は死後20年以上経過している、(2)偉人ひとりにつき建造物ひとつ、などが挙げられる。2017年6月には、喜劇王チャップリンの下宿先に銘板が設置された。また、モーツァルトやナポレオン3世、夏目漱石など、外国の偉人の滞在先も対象となっている。
このほか、「イングリッシュ・ヘリテージ」以外の団体が選定した「非公式」のブルー・プラークも存在する。たとえば、架空の人物であるシャーロック・ホームズの下宿先ベーカー街221Bに設置された銘板が有名だ。
◆地域経済のカンフル剤
「軽井沢ブルー・プラーク」では、天皇皇后両陛下ゆかりの「軽井沢会テニスコート」や、作家・堀辰雄の山荘「スミス別荘」など、30件の建造物が2017年度分として認定された。今後3年ほどかけて、計100件ほどに増やす予定である。
ブルー・プラークの設置は、軽井沢の歴史的建造物の保存だけではなく、地域経済の発展に大きく貢献すると予測される。まず、観光産業のカンフル剤となることだ。イギリスではブルー・プラーク巡り専用のガイドブックやスマートフォン・アプリが用意されており、軽井沢でも同様のニーズが生まれるであろう。
また、ブルー・プラークは副次的に、不動産業界へも影響を与える可能性が高い。英テレグラフ紙では、「非公式」のブルー・プラークが設置されたというだけで、サッチャー元首相の旧宅の販売価格が1年ほどで約8.4倍に跳ね上がった、と報じている。近衛文麿や田中角栄など日本の歴代首相の多くが別荘を構えた軽井沢だからこそ、その真価が発揮されるであろう。
◆東京オリンピックの後を見据えて
2020年を目指し都市開発が進む東京。伝統的な町家の姿が消えつつある京都。震災の爪痕がまだ癒えぬ福島・熊本――わが国でも歴史的な建造物の保存・管理が問題となっている。とりわけ、アインシュタイン、チャップリン、ヘレン・ケラーなど世界的に有名な偉人も日本各地を巡遊しているが、その訪れた場所は彼らの偉業ほどは知られてはいない。
そこで、各都市でもブルー・プラーク制度を取り入れてみては、いかがであろうか? 世界の偉人が訪れた歴史的建造物は、国内だけではなく、海外からも観光客を呼び込む日本の魅力となるであろう。
東京オリンピック以後、経済の先行きが不透明といわれる日本。さらなる外国人観光客のインバウンド需要を生む仕掛けを今から準備すべきである。