2016年のFinTech投資は中国の大型案件が牽引、欧米ではビジネスモデルへの懸念も
総合コンサルティング企業のアクセンチュアによると、グローバルにおける2016年通年のフィンテックベンチャー企業への投資額は、前年比10%増の232億ドルに達したという。アジア・パシフィック地域が2015年の52億ドルから112億ドルへと2倍以上の増加となり、初めて北米における投資額を上回った。なお、北米における投資額は92億ドル、欧州は24億ドルであった。
アジア・パシフィック地域での投資額が大きくなったのは、中国で超大型案件が相次いだことが主要因だ。最大の投資案件は、中国のオンライン決済プラットフォーム「Alipay」を運営する、Eコマース大手Alibaba Group Holding傘下の金融サービス企業「Ant Financial Services Group」が、2016年4月に実施した45億ドルの資金調達だ。また、Lu.comとしての事業展開を進めているPing An傘下の「Lufax」が、2016年1月に実施した12億ドルの資金調達、さらに同月、中国第2位のEコマース企業「JD.com」が、消費者金融子会社であるJD Financeのために新たに10億ドルを調達したことも、フィンテック投資総額を押し上げる要因となった。
日本における2016年のフィンテック投資額は1億5,400万ドルとなり、6,500万ドルであった昨年から倍増した。しかし、この投資額は世界の0.66%程度、アジア・パシフィック地域の1.37%に過ぎない。日本におけるフィンテック投資領域としては、ビットコインなどを含む決済関連が6,200万ドル規模となっており、最も多くの投資が行われる領域だ。また、グローバルでの動向と同様にロボ・アドバイザーといったウェルス&アセットマネジメント関連への投資も活発であった。
アクセンチュア金融サービス本部のグループ・チーフ・エグゼクティブを務めるリチャード・ラム(Richard Lumb)氏は、「投資の中心が欧米からアジア・パシフィック地域に移行した主な要因として、新規参入者にとって、フィンテックを活用して業界の新たな仕組みを構築する機会が、アジア・パシフィック地域により多く潜在することが挙げられます。」と分析している。
また、アクセンチュア株式会社の金融サービス本部統括本部長の中野 将志氏は、北米・欧州での2016年のフィンテック投資について、「シリコンバレー、ニューヨーク、ロンドンのような成熟したフィンテック市場にとって2016年は、“不確実性の年”であったと言えるでしょう。投資ブームへの懸念、バリュエーションの上昇、大手フィンテック企業のビジネスモデルに疑問符がつくなど、従来のフィンテック・ハブにおける大型投資が減少しました。政治動向も、フィンテックベンチャー企業の市場参入や事業機会に対する懸念を呼び起こし、金利や為替動向についての懸念も続きました。」と述べている。
本調査は、ベンチャー企業の財務データ収集・分析業務を国際的に行う、CB Insights社が提供するデータをアクセンチュアが分析したものだ。
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