現金を落とす日本、それが返ってくる日本…海外が驚き 16年に都内で落とし物36億円

 警視庁遺失物センターの発表によれば、東京都内で2016年に落とし物として警察に届けられた現金は過去最高の約36億7000万円で、その4分の3に当たる約27億円が落とし主のもとに戻ったという。海外では「落としたお金は戻ってこない」と思われており、拾った人がそのままいただいてしまう場合も多い。世界的に見て特異な日本の落とし物事情を、海外メディアが解説している。

◆道徳教育の成功。拾ったものは届ける
 ブルームバーグは、鍵やメガネから現金まで、落とし物を届ける日本人の熱意は驚異的だと述べる。CNNは、東日本大震災の後、津波で壊滅的被害を被った宮城県で、通常の10倍の現金の落とし物が警察署に届けられたと報じ、拾った物、特に現金は届け出るという誠実な習慣が、大災害の後でも変わらず残っていたと紹介している。

 落とし物は届けるという考えは、日本の倫理教育で形成されたものだと多くの海外メディアが指摘する。元警官で関西国際大学教授の西岡敏成氏は、日本の学校では倫理や道徳が教えられ、生徒たちは物やお金をなくした人の気持ちを想像できるようになるとし、小さな子供が拾った10円玉を交番に届けることも珍しくないと説明している(ブルームバーグ)。CNNも、日本では小さい時からお金を含め「落とし物は警察へ」と教育されており、他人のものは決して取ってはいけないという文化的習慣があると述べる。

◆キャッシュ好き日本。治安の良さも、現金の落とし物に貢献
 海外は、そもそもこれだけのお金が落とし物になっていることに驚いているようだ。ブルームバーグは、東京の遺失物センターに届けられた現金が過去最高となった理由として、流通している現金が多いことを指摘している。今年2月の日銀のレポートによれば、日本における現金流通残高の対名目GDP比率は2015年で19.4%と、調査に参加した先進国18ヶ国の中で最も高く、キャッシュレス化が進行しているスウェーデン(1.7%)の約11倍にもなるということだ。

 さらにブルームバーグは、人の多い東京でさえ、カフェの場所取りのためにテーブルにiPhoneを置いたまま席を離れる人も珍しくないこと、些細な忘れ物でも店員が保管してくれたりすることを上げ、治安の良さも、現金の所持が多い理由だと述べている。

Text by 山川 真智子