最近の日本会議バッシングに見える海外メディアの問題…知日派識者“真剣な分析が見たい”
「日本会議に牛耳られた安倍政権が、改憲を達成し日本の民主主義を逆行させる」外国人ジャーナリストによるこのような報道に疑問を呈する外国人識者もいる。カルト、ファシズムなど強い言葉を使い、改憲こそ悪だという見方は公平なのか、根拠はあるのかと、2人のアメリカ人識者が批判に対する批判を述べている。
◆日本会議批判は、自称日本通による批判
日本戦略研究フォーラムのシニアリサーチフェローで、外交官、ビジネスエグゼクティブとして日本で20年の経験を持つグラント・ニューシャム氏は、安倍首相の考えは、日本会議のイデオロギーと同じだと批判されるが、実は日本社会の多様な意見のうちのひとつに過ぎないと述べる。
同氏は、米ナショナル・レビュー誌が日本は「ファシズム」に回帰すると述べたことに対し、実際には自民党支持者の中でさえ、日本会議への支持は高まっておらず、3万8000人という同団体の会員数も、スマップのファンクラブ会員の30分の1だと述べ、適切な表現なのかと疑問を呈している。さらに、参院選での自民党の勝利は、改憲と「自虐史観」の見直しとは関係なく、むしろ野党が無能だったため、少なくとも生活が改善しそうな政策を掲げた自民党が有権者に選ばれたと見るべきだと述べる。
それでも海外メディアは、確たる証拠もなく、安倍首相は悪魔の化身であり、その分身が日本会議だと信じており、両者がこっそりと改憲を成し遂げてしまうと考えている、と同氏は説明する。同氏はまた、日本会議と安倍首相の政策についてコメントする海外識者からは、日本人より日本が進むべき道をよく知っているという雰囲気が感じられるが、日本国民は外国人が思うより賢く、自分のことは自分で決められると述べている。
◆軽率なジャーナリズムこそ危険
元ワシントン・ポスト紙の東京特派員で、大手の新聞で27年の経験を持つポール・ブラスタイン氏も、日本会議と安倍政権が結託して陰謀を企てているかのような報じ方に批判的だ。特に、ジェイク・アデルスタイン氏が書いたウェブ誌「Daily Beast」の「宗教的カルトがひそかに日本を動かしている」という表現はナンセンスを超えて差別だと断じ、このような記事が海外での妄想に油を注ぎ、領土問題など軍事力で解決してしまえという中国の超国粋主義者たちを刺激する危険性もあると、米調査機関NBRの電子掲示板「Japan Forum」で述べる。さらに、アデルスタイン氏がジャーナリストとしてフェアであるなら、多くの日本研究者が日本会議は政治家が関係する数百の組織の1つにすぎないと見ており、その影響力に関しても、日本の消息通の間ではかなり懐疑的な意見があることも認めるべきだったとしている。
ブルスタイン氏は、政権や日本会議についての問題を提示し、議論することは全く筋が通っているが、国民の大多数が平和憲法の維持に賛成しているにもかかわらず、日本が帝国主義やファシズムに戻ろうとしているかのような悪夢をかき立てるのは問題だと述べる。そしてそれ以上に問題なのは、アデルスタイン氏のものが単なるトンデモ記事なのか、それとも海外メディアが、特に改憲に関し日本を報じる際の、根深い問題を示す極端な例なのかだと述べており、改憲=悪ではなく、もっと賛否両論を紹介する、真剣な分析が海外メディアで見られることを期待したいとしている。
◆神道の黒幕が政権を操る?海外メディアの誤解を菅野氏が指摘
さて、東京の外国特派員協会では、13日に田久保忠衛会長の会見が、続いて19日には、話題となっている「日本会議の研究」の著者、菅野完氏の会見が多くの外国人ジャーナリストを集めて行われた。
田久保氏には外国人ジャーナリストから厳しい質問が浴びせられたようだ。APは、日本会議の超保守的な活動を紹介するとともに、田久保氏の「安倍首相の参院選での勝利を最大限に利用し、よりアクティブな軍隊を持てるよう改憲を成し遂げたい」というコメントを大きく報じている。
もっとも外国人ジャーナリストを驚かせたのはむしろ菅野氏だったかもしれない。会見の冒頭で同氏が、「政権をあやつる黒幕がいる」、「国家神道を復活させたい勢力がいる」、「狂信的な集団が政権を支えている」という海外メディアが持つ日本会議のイメージは誤解だと明言したからだ。日本会議の政権への影響力は確かにあるという同氏だが、戦争の記憶がそうさせるのか、海外メディアは神道の力を過大に見ているとも述べている。同氏は、日本会議の主張に流れるのは、排外主義、男尊女卑、人権無視、子供の軽視だとしており、このような左右を問わず日本社会のなかにあるものこそが、問題だとしている。