我々の宇宙はブラックホールの中にある? ウェッブ宇宙望遠鏡で思わぬ事象を観測
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私たちの知る宇宙全体は、巨大なブラックホールの中にあるのかもしれない。ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡が捉えた最新データにおいて、遠い銀河の回転方向に予想外の偏りが見つかった。研究者たちによるとこの偏りは、宇宙全体が別の宇宙のブラックホール内に存在ことを示唆するという。
◆銀河の回転方向に見られる不可解な偏り
米カンザス州立大学の研究チームの観測結果によると、ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡の先進深宇宙銀河探査(JADES)プログラムで撮影した映像から、多くの銀河が同じ方向に回転する傾向が観測された。この研究はイギリスの学術誌「王立天文学会月報」に2月17日付で掲載されている。
カール・R・アイス工学部のリオール・シャミール准教授(コンピュータサイエンス)らの研究グループは、JADES領域内で鮮明に写った263個の銀河を調査した。その結果、約3分の2の銀河が時計回りに、残り約3分の1が反時計回りに回っていることが分かったという。
本来ならば、時計回り、反時計回りの銀河の数はほぼ同じのはずだ。しかし、偏りの存在を立証した今回の発見により、宇宙の基本構造に関する新たな理論が必要となった。
◆私たちは別の宇宙の中にいるのか
偏りを説明するうえで注目されるのが、「ブラックホール宇宙論」だ。宇宙ポータルサイトの『スペース・ドット・コム』によると、この理論は私たちの宇宙がより大きな親宇宙内のブラックホール内部に収まっているとする理論だ。仮にそうであれば、ブラックホールの回転の影響を受けることで、本来は均等なはずの銀河の回転方向に偏りが生じているとの説明が成り立つ。
米ニューヘイブン大学のニコデム・ポプラウスキ氏は、同サイトの取材に応じ、「私たちの宇宙に優先軸(preferred axis:宇宙が均等でなく、特別な偏りがあるとする考え方)があるとすれば、それは非常に興味深い現象」とし、「優先軸は、私たちの宇宙が親宇宙内のブラックホールの事象の地平線の向こう側で生まれたという理論を踏まえると、自然に説明できるものだ」と語る。
◆天の川銀河の回転が観測に影響? 別の説明の可能性も
ただし、一方向に回転する銀河が多く観測される現象については、観測上のバイアスという見方も出ている。カンザス州立大学の説明によると、地球を含む太陽系自体が天の川銀河の中心を中心として公転しているため、ドップラー効果が生じ、地球の自転と逆方向に回転している銀河からの光はより明るく見える。
こうした効果により、望遠鏡による観測において、特定方向に回転する銀河が目立って見えているだけの可能性があるという。もっとも、科学ニュースサイトの『IFLサイエンス』は、これまで天の川銀河の回転は比較的遅く、その影響は小さいと考えられてきたと補足している。
仮に回転方向の偏りが真実ならば、何らかの理由が存在すると考えられる。銀河の回転に注目し宇宙の構造を示唆する、興味深い研究内容となっている。