「隠れインフレ」が進行中? 政府発表と消費者の実感にギャップ その理由とは

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 日銀の金融緩和から2年。2%のインフレ目標を掲げ、デフレ脱却を目指した『黒田バズーカ砲』だが、2月のコアCPI(消費者物価指数)インフレ率と消費者の感じている物価の上昇率にはギャップがある。発表される数字と、庶民の肌感覚に差が広がっているとして、海外メディアが分析記事を掲載している。

◆インフレなくとも生活費は上昇
 ブルームバーグは、「日本の隠れたインフレという不思議なケース」という記事を掲載。「消費者物価指数に従うのなら、インフレはほとんど消えてしまった」と述べるが、日銀の消費者調査からは、「庶民は、生活費が公式のインフレ率の2倍以上の速度で上昇していると感じている」ことが読み取れるとしている。

 一ツ橋大学の阿部修人教授は、リサーチ会社とスーパーマーケット団体の協力を得て作られた、「SRI一橋大学消費者購買指数」にその答えを見つける。この指数には、平均的な小売店で売られる商品のほぼ半分を占めるのに、公式データには反映されることが少ない「新製品の価格における変化」と、「価格を据え置き容量を少なくする商法」が反映されている。そのため、「SRI一橋大学消費者購買指数」では、コアCPIがゼロとなった今年2月でも、生活費は上昇となった(ブルームバーグ、注:コアCPIと同様、一ツ橋大の指標でも、生鮮食品と昨年の消費増税の影響は除外されている)。

 結果として、賃金上昇が遅れる中でより家計を圧迫することは、さらに消費を冷え込ませ、黒田総裁のプランも台無しになる恐れもあることから、さらなる金融刺激策には踏み切りづらいだろうと、ブルームバーグは述べている。

◆地域経済は一部で回復傾向
 もっとも、13日に発表された日銀の地域経済報告によれば、北陸、東海、近畿の3地域では景気回復が見られるという。特にトヨタ自動車を抱える東海地方は、「着実に回復を続けている」と近年にない高評価を得た。また、円安の影響や中国での人件費高騰を受け、大企業や部品サプライヤーが生産を国内に戻したり、国内工場の新規建設を始めたりしているという(ロイター)。

 ロイターは、輸出の立ち直りで日本は不景気から脱しようとしているが、個人消費が弱く回復の強さには疑問符が付くとし、今年中の更なる日銀による刺激策の余地も残したと、ブルームバーグとは逆の見方を報じている。

◆真の回復はあるのか?
 APは、消費増税の影響もあるが、期待された消費や設備投資が回復しなかったことが「バズーカ」の問題の一つだと指摘する。黒田総裁と安倍首相は、株価や企業の利益を上げることでは大きな進歩を見せた。失業率も改善させ、賃上げも始まりつつあるが、そのペースは遅すぎるとAPは述べる。

 さらに、すでに莫大な国の借金を抱える日本で、投資家を怖がらせることなく日銀がお金を刷るのも限度があり、財政健全化が強く求められていると指摘。また。非正規で低賃金、社会保障も貯金もない人々が増える中、貧困率が高まっている現状にも危惧している。結論として、日本の景気が回復したとしても、幅広い層の国民の購買力が戻らないなら、それを維持することはできないだろうと述べている。

Text by NewSphere 編集部