トランプ外交は機能するか? ウクライナ戦争終結、米朝首脳会談
いよいよ、第2次トランプ政権が発足する。トランプ外交はアメリカ大統領選直後からすでに始まっているが、今年の世界情勢において最大の関心事はその行方だろう。これまでのところウクライナ戦争の終結に力を入れているようだが、結果重視のレガシー作りに最大限尽力する4年間となりそうだ。だが、当然ながら1期目の時から国際情勢は大きく変化していることから、結果重視のレガシー作りが上手くいくとは限らない。ここでは、その観点からトランプ外交の行方を簡単に見ていきたい。
◆トランプ氏の終戦案は休息期間?
トランプ氏は昨年末、フランス・パリを訪問し、同国のマクロン大統領とウクライナのゼレンスキー大統領と会談し、ウクライナ戦争の終結に向けて意見交換を行ったが、その隔たりは依然として大きい。
バイデン大統領やゼレンスキー大統領と違い、トランプ氏はロシア軍がウクライナ領土を実効支配する現状での終戦を目指すとされ、そこに自由や民主主義、法の支配といった価値観や理念はなく、これも終戦という結果重視のレガシー作りの一環と考えられる。トランプ氏が重視するのはどのようにして終戦に至るかではなく、終戦するかどうかであり、それを達成するためにウクライナ、ロシア双方に圧力や脅しをかけ、双方から譲歩や妥協を引き出そうとするだろう。ゼレンスキー氏が終戦案に消極的であれば、ウクライナ支援の縮小や停止を持ちかけ、ロシアが消極的であればウクライナ支援の増額、ウクライナの北大西洋条約機構(NATO)接近などをちらつかせるだろう。
しかし、どんな終戦案であれ、プーチン大統領が従うことはない。同氏のこれまでの発言から、クリミアやウクライナ東部のみの実効支配で満足する姿勢は見られず、おそらく首都キーウの掌握やゼレンスキー政権の崩壊、そして親ロ的な傀儡(かいらい)政権の発足まで攻撃を停止しないだろう。
よって、トランプ氏の要請に応じて和平交渉のテーブルについても、それは軍を再編成し、再び攻撃を開始するまでの休息期間でしかないだろう。そういう意味では、最初から屈辱的な停戦案を提示されるゼレンスキー氏より、プーチン氏の方がトランプ氏による終戦案に乗りやすい。
◆米朝首脳会談の再現も難しいか
一方、トランプ政権2期目にあたり、トランプ氏は北朝鮮の金正恩氏と再び会談することにも意欲を示している。しかし、1期目の時と現在の北朝鮮を取り巻く環境は大きく異なっており、前回のように米朝首脳会談を積み重ねていくことは難しいかもしれない。1期目の時は、ベトナム、シンガポール、板門店で3回も会談したが、結局のところ交渉は頓挫し、事が金正恩氏の思い描くようにはならなかった。今後、金正恩氏がトランプ氏と再び会っても意味がないと判断すれば、2期目では会談すら行われないこともあるだろう。
また、1期目の際、韓国の大統領は北朝鮮に融和的な文在寅(ムンジェイン)氏だった。文在寅氏の存在によってトランプ、金正恩両氏が接近することが可能だったとも言え、戒厳令で内政が混乱する韓国の現状を考慮すれば、米朝首脳の対面は以前のように簡単ではない。さらに、ウクライナ軍との戦闘に北朝鮮兵が参加しているように、北朝鮮はロシアとの軍事的結束を強めており、両国は同盟国のような位置付けにある。こういった北朝鮮が置かれている戦略環境を考慮すれば、トランプ氏の北朝鮮外交は前回とは別物になる可能性がある。