新国立競技場は「粗大ゴミ」…日本人建築家の批判に、設計者ザハ・ハディド氏が反論

 2020年の東京オリンピックとパラリンピックのため建設される新国立競技場に対し、抗議の声が鳴りやまない。市民を巻き込んで反対を唱える日本の著名な建築家たちに、設計者のザハ・ハディド氏が反論。論争は終わる気配がない。

◆物議を醸しだし修正
 英ガーディアン紙によれば、建築家の磯崎新氏は、スタジアムのデザインを「亀が泳いで逃げるため、日本が沈むのを待っているかのよう」と表現。同紙は、高い予算と周辺環境に影響を与えるような形状が、物議を醸しだしてきたと述べ、有名な建築家たちがプロジェクト廃止のため嘆願を行い、3万3000人分の署名を集めたと報じている。

 アメリカの「ギズモード」はこの話題に明るくない読者のために、ざっと以下のように経緯を説明している。

 新国立競技場のデザインとしてハディド氏の案が選ばれると、大きすぎる、費用が高すぎる、不快で嫌なデザインだとして、素早く日本の著名な建築家が批判を始めた。何百人もの市民も巻き込んで、デザインへの抗議はエスカレート。結局修正案が発表され、3000億円という法外な費用が削減されることとなった(注:2014年5月に、総工費として1625億円が承認されている)。

◆外国人だからダメ?
 ところがデザイン修正後も、批判は後を絶たない。修正案を「見て絶望した」という磯崎氏は、東京五輪の計画を担当する日本スポーツ振興センターに公開書簡を送付。「歪められた」プロセスで「つまらない退屈な形状」に修正したことを批判した。同氏は、スタジアムを建設すれば、「東京は確実に巨大な粗大ゴミを抱え込むことになる」と訴え、反対する他の建築家からも、「途方もない間違い」、「単に馬鹿げている」などの声が挙がっている(ガーディアン紙)。

 これに対しハディド氏は、「dezeen」のインタビューで反論。デザインに反対する日本人建築家たちの多くは友達という同氏だが、「彼らは東京の国立競技場を外国人に作ってほしくないのだ」と語った。また、選ばれはしなかったが、多くの日本人建築家がデザインのコンペの最終審査に残っていたと指摘。「あの場所でのスタジアム建設に反対するなら、彼らはコンペに参加すべきだったとは思わないと」述べ、「東京が彼らの街であるのは分かる。だが、彼らは偽善者だ」と非難した。

 議論が噛み合っていない点が残念だ。

◆論争は続く予感
 両者の批判の応酬に、米「ギズモード」はどちらもお世辞にも褒められないコメントだとし、今後も両サイドからの意見を聞く事になるのは、ほぼ確実だと述べた。

 同サイトの読者からは次のようなコメントが寄せられた。

・別にいいし。現代のスタジアムなんか全部醜いだろうが。スタジアムに何求めてんだ?
・かっこいいと思う。美意識を語る上で東京ドームのこと考えたら、新国立への批判をマジで受け止めるのは厳しいでしょ。東京のほとんどは、つまんないコンクリートの荒れ地なんだし。
・オリンピックやるといらない借金が増えるってことに、みんなだんだん気づき始めたんじゃない?
・どちらの意見も分かる。賢明な解決法は、作らないってことだ。

 また、ハディド氏のデザインに関しては、「便器?」などという困った感想が挙がっていた。

Text by NewSphere 編集部