ジョージアはロシアに飲み込まれるのか 不正疑惑のある議会選で「親ロ派」与党勝利
欧州連合(EU)加盟を目指す旧ソ連構成国ジョージアで、10月26日に議会選挙が行われた。結果はロシア寄りの与党の勝利となったが、野党や大統領は不正があったと主張して、国民に抗議デモ参加を呼びかけた。与党のもとで権威主義的傾向は強まっており、民主主義の後退が懸念されている。
◆旧ソから民主化へ 国民はロシア嫌いでも政府はロシア寄り
ジョージアはロシアとトルコに挟まれた、コーカサスの山々の懐に位置する人口約300万人の国だ。1991年にソ連から独立し、以来親欧米政策を取ってきた。多くの国民は、旧支配国であり、アブハジアと南オセチアというジョージア領内の反政府地域を支援するロシアを嫌っている。
与党「ジョージアの夢」は、億万長者で、最大の権力者とされるビジナ・イワニシビリ元首相が支配している。同氏はEUと北大西洋条約機構(NATO)への加盟を希望しながらも、ロシア寄りにシフトしている。近年与党は、西側批判を展開し、権威主義的な法案を可決している。
世論調査によれば、ジョージア国民はEUやNATOへの加盟を支持しているが、ロシアとの紛争は避けたいと考えている。議会選挙に際し、与党はジョージアがウクライナ戦争に巻き込まれないようにすると約束。一方、野党各党は深刻な分裂を抱えており、選挙での共闘に合意できていなかった。それでも、与党から過半数を奪って連立政権の樹立を狙っていた。(ロイター)
◆票は盗まれた ロシアの関与を示唆
開票の結果、与党が54.8%の票を獲得して勝利した。しかし英紙ガーディアンによれば、投票結果と、欧米の世論調査会社が行った出口調査との間に著しい差があったと野党は指摘している。野党4党は不正選挙だとし、そのうち2党は議会をボイコットするとした。
サロメ・ズラビシビリ大統領は、票は組織的に盗まれたと主張しており、具体的証拠の提示はしなかったが、ロシアの関与を示唆した。同氏は政府がロシアの安全保障機関から援助を受けているという見方を APに示している。
ジョージアの中央選挙管理委員会は一部の地域で再集計を行ったが、以前に発表された公式結果を大きく変えるものではなかったと結論づけた。国際的監視団、EU、アメリカは、選挙の不正を批判し、完全な調査を要求。欧州委員会は、ジョージアが方針転換しない限りEU加盟交渉の開始を推奨しないとしている。一方ジョージア内務省は、選挙のやり直しを拒否している。(ガーディアン紙)
◆民主化は後退 ロシアの影響下に戻るのか?
米シンクタンク大西洋評議会のシニアフェロー、ブライアン・ウィットモア氏はジョージアの議会選挙は、ウクライナで起きたマイダン革命のような市民革命の段階に入ったと指摘。考えられる結果として、①街頭抗議運動が権威主義政府を追放する、②ベラルーシのように裏でロシアの支援を受けて、民主的な反対派が暴力的に弾圧される、③ウクライナのようにロシアが介入する口実にされる、という3つの可能性をあげている。
保守化が進む与党を批判する人々は、同党がEU加盟への道を頓挫させ、クレムリンの軌道に引き戻そうとしていると非難している。ソ連とロシアによる長年の支配から抜け出したジョージアだが、民主化への道は険しさを増している。