日本初、グーグルに検索結果削除命令 EU「忘れられる権利」判決も影響
日本人の男性が、グーグルに対し検索結果を削除するよう求めていた仮処分申請に対し、東京地裁は9日、検索結果の一部を削除するよう命じる決定を下した。男性は、自分の名前を検索すると、事実とは異なり、過去に犯罪行為をしたかのように連想させる結果が多数表示され、人格権が侵害されているとして、処分を求めていた。
◆人格権の侵害
東京地裁はグーグルに対し、男性が過去に犯罪行為をしたかのように連想させる230件の検索結果の内120件を削除するように命じた。
東京地裁(関述之裁判官)は、「検索結果から『男性は素行が不適切な人物』との印象を与え、実害も受けた」として男性側の請求を認めたという。
男性の代理人の神田知宏弁護士は、「ネット上で、プライバシー侵害を受け、心身ともに傷ついている多くの人にとって今回の決定は大きな朗報だ」、とウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)紙に語っている。
◆グーグル「サジェスト機能」訴訟
グーグルの「検索結果」を削除するよう命じる仮処分決定は、国内で初めてではないかと言われている。
昨年4月、グーグルの「サジェスト機能」(検索キーワード予測)により名誉を傷つけられたとする男性の訴訟に関し、東京地裁は表示差し止めを命じていた。しかし、1月の控訴審で、東京高裁は、一審判決を取り消していた。
◆「忘れられる権利」
近年、検索エンジンがユーザーに何を伝えるべきかに関し、世界中で議論が巻き起こっている。
欧州連合(EU)の最高裁判所に相当するEU司法裁判所は5月、個人が自分の名前を検索した際に表示されるリンクについて、グーグルなど検索エンジン運営会社が削除義務を負うとの判決を下した。
同判決は、個人の「忘れられる権利」を認め、古い、または不適切な情報へのリンクを削除するよう要求する権利を個人に与えている。
WSJによると、グーグルは、5月29日からリンク削除要請の受け付けを開始し、木曜日の時点で、49万7507件の削除要請を受け、42%を削除した。
EUの判決が、プライバシー権の勝利とする見方もあれば、ネット上の情報検閲に繋がると警告する声もある、とAPは指摘する。
今回の東京地裁の決定は暫定処置であり、EUの司法裁判所の命令よりは影響が少ないと見られている。それでも、言論の自由か、それとも、プライバシーの尊重か、世界中で盛り上がっている議論に、さらに油を注ぐことになるだろう、とWSJは指摘している。