日本のビール会社、世界で戦うには大型M&A必要と海外報道
ウォール・ストリート・ジャーナル紙(WSJ)によれば、2013年のビールの国内出荷は1%減。9年連続の減少となり、少なくともこの21年間で最低レベルにある。縮小する市場に対応するため、国内ビール各社は、生き残りを賭け、新戦略を打ち出した。
【各社プレミアムに参入】
各社力を入れているのが、プレミアムビールだ。先駆けは、サッポロ『プレミアムエビス』とサントリー『プレミアムモルツ』。普通のビールより10~20%割高だが、販売は好調。2003年には5%以下だったプレミアムの国内市場シェアは、今年末には15%に成長するとサントリーは予測している(フィナンシャル・タイムズ紙、以下FT)。
アサヒは、『スーパードライプレミアム』でプレミアム市場に参入。次いでキリンも『一番搾りプレミアム』をギフト限定で投入した。プレミアムのおかげで、今年前半のサッポロ、サントリー、アサヒの国内ビールセールスは増加。キリンは4.8%減となっている(FT)。
【多様化で収益を】
ビールではシェアトップのアサヒグループホールディングスの泉谷直木社長は、FTのインタビューで、「マージンを破壊するような4社の価格競争から、プレミアムビール販売へ方向転換した」と述べ、顧客の好みを重視する商品で収益を上げようとしている。
また、海外での日本ウィスキーブームも手伝って、同社のウィスキーの販売も好調。2001年に買収したニッカウィスキーの創業者をモデルにした、NHK朝の連続テレビ小説『マッサン』も、「素晴らしい宣伝」と泉谷社長は述べており、高齢化、人口減、嗜好の多様化で停滞するビール需要をウィスキーが補うことを期待している(WSJ)。
各社は、若者、特に女性向けに多様な商品を開発しており、キリンは「一番搾り」を使ったカクテル、フルーツリキュール等を投入した。サントリーは、モヒート、サングリアなどローカロリーを謳った商品を販売。今年初めには、バーボンの「ジムビーム」を持つビーム社を136億ドルで買収し、海外にも成長の場を求めている。
【地ビールに注目】
ビジネスマン向けの情報サイト『Quartz』は、キリンが長野県の従業員30人の小さな地ビール会社『ヤッホーブルーイング』と資本提携したと伝えた。ビールの消費が低迷する中、近年ヤッホーは二桁の伸びで成長。同社の『よなよなエール』は、質の高いクラフトビールとして国内外で賞賛されているという。
『Quartz』は、日本の地ビール醸造所は、様々な原料を使い、「手を緩めることなく醸造技術と商品の洗練に取り組む」ことで知られているとし、完璧を追及する日本人の技が、大阪の『箕面ビール』や川越の『コエドビール』など、世界のビール・コンテストで入賞する、最高のビールを作り上げていると述べている。
日本地ビール協会の調べでは、2013年のクラフトビールの国内消費は、2008年から21%も増加しているが、ビール消費全体のたった1%でしかないという。しかし、今回のキリンによる大型買収をきっかけに、他の大手ビール会社も地ビール取り込みに参入する可能性もあると、『Quartz』は指摘している。
【「M&Aが必要」】
各社、さまざまな取り組みで売上を伸ばそうと努めているが、FTは、ABインベブ、SABミラー、ハイネケン、カールスバーグといった世界的ビールメーカーと勝負するためには、M&Aが必要と指摘している。同時に、2010年のキリンとサントリーの統合交渉決裂について触れるなど、その難しさも示唆している。
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