“消費税10%にすべき” OECD事務次長、日本の将来のために提言
22日に行われた記者会見で、経済協力開発機構(OECD)の玉木林太郎事務次長兼チーフエコノミストは、日本の金融、財政政策について意見を述べた。海外メディアは円安と輸出、インフレ・ターゲット、消費増税の観点から同氏の考えを紹介している。
【円安で大幅輸出増はない】
ウォール・ストリート・ジャーナル紙は、「国の輸出の成長を決める主な要素は、為替レートなのか」と問いかけ、「Jカーブ効果」に着目。通貨安は短期の貿易収支の悪化を導くが、その後に輸出回復と輸入減少となり、そのタイムラグはほぼ12か月だと説明する。しかし、円が下落して2年を経ても、輸出増加効果はまだ見られないと同紙は指摘する。
玉木氏は、実は日本の貿易バランスにおける為替レートのインパクトは、常に限定的だったとし、円安を通じて、輸出を2008年の金融危機前のレベルに戻そうとする試みは、失敗するだろうと述べた(ウォール・ストリート・ジャーナル紙)。
同氏は、2000年からの8年間に日本が経験した輸出における77%の成長は、世界的好況によってもたらされたものであり、為替レートにはほぼ関係なかったと指摘。リーマン・ショック前と比べ、世界貿易の成長は半分に減速しているため、円安でも大幅な輸出の成長はないと語った(ウォール・ストリート・ジャーナル紙)。
多くの民間のエコノミスト達も、世界的需要が構造的に不足している今、「Jカーブ理論」は役に立たず、輸出の増加には、円安より世界での需要回復が必要だと述べている(ウォール・ストリート・ジャーナル紙)。
【インフレ・ターゲットも危険信号】
ロイターは、日銀が2015年春に目指す2%のインフレ・ターゲット達成は困難であり、2015年10月の第2次消費増税をにらんで、日銀が新たな策を早急に講じる必要がある、と玉木氏が述べたことを伝えている。
インフレ・ターゲットに関しては、民間のエコノミストからも達成は難しいと指摘されており、さらなる金融緩和を期待する声もある。玉木氏は、追加緩和は黒田日銀総裁次第とし、次の消費増税のインパクトを和らげるため、金融政策等の短期の刺激が必要になると語った。しかし、財政再建の立場から、政府による大型の財政出動は避けるべきだと発言した(ロイター)。
【消費税10%は必要】
インドのエコノミック・タイムズ紙は、玉木氏の「日本の負債はこの数年で増加。ある意味ギリシャに匹敵する」という言葉を引用し、急速な高齢化で医療と社会保障が雪だるま式に増えているため、国の借金が先進国最悪であると説明する。
東日本大震災があった2011年以来、4-6月期は最悪の落ち込みを見せている日本経済だが、玉木氏は、消費税10%は実施されるべきだとする。増え続ける負債は「国債の不人気により金利を上昇させるリスク」を持つ。しかし、それ以上に深刻なのは、「主権国家の核である、国の財政状態への国民の不安が、経済と社会に大きな負のインパクトを持つという事実だ」と同氏は指摘した(エコノミック・タイムズ)。
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