「30人以上が辞めてくれました」 Xで湧き出る「インプレゾンビ」解決に取り組む日本人

Masaya_shocho(@masayasan201911) さん提供

現在多くの日本人Xユーザーが頭を悩ませている、インプレゾンビ問題。

【画像】インプレゾンビに向き合う日本人

インプレゾンビとは、インプレッション数による収益獲得のため、バズっている投稿と関係の無いリプライや引用RPを付けたり、他人のコメントをコピーして大量に投稿するアカウントのことを指します。

インプレゾンビに対し啓発目指す日本人

これらのアカウント主は経済的に厳しい環境にあるパキスタンやインド、ナイジェリア、そして中東の国々在住の人であることが多いと言われており、インプレッション収益で生計を立てている人もいます。

しかし、日本で災害が起きた際のインプレ稼ぎ投稿が情報共有の障害になったり、普段の投稿でもインプレ稼ぎ投稿に邪魔されて他ユーザーと円滑なコミュニケーションが取れないなど、日本人ユーザーにとって様々な不便が生じています。

そこで、編集部はインプレゾンビ問題に取り組むXユーザーのMasaya_shochoさん(@masayasan201911)に取材を行いました。

投稿者さんが現在運営しているのは、インプレゾンビの大半が集まるインドに向けた啓発広告の掲載を目指すプロジェクトです。

このプロジェクトではXの有料の広告掲載機能「プロモ広告」を使用し、インドのユーザーにXのルールを広めることを目指しています。

Xへの広告費用や手数料、ヒンディー語への翻訳費等合わせて300万円の支援を募っています。

インプレゾンビ問題に取り組む理由

投稿者さんは何故、ここまで本気でインプレゾンビ問題に取り組むのでしょうか。

それは、投稿者さんが元々イスラム圏の人々やインドの文化に接触する機会があったことに関係しています。

学生時代からイラン旅行や、ドイツでトルコ人やクルド人の移民に囲まれて暮らすといった経験を重ねた投稿者さん。

その後も従業員の半数がイスラム教徒という日本にあるアラブ系企業で勤務し、様々な人と交流し中近東や南アジアの文化について学ぶ機会が非常に多かったといいます。

さらに、南インドの菜食料理をはじめとしたエスニック料理が好きで、アフリカ料理の食べ歩きなども行っているそうです。

このように、投稿者さんはインプレゾンビ達の母国に以前から関心を持っていました。

インプレゾンビたちに接触して分かったことは?

インプレゾンビ問題に早くから注目していた投稿者さん。

2024年5月にネタ投稿としてインプレゾンビに向けて「カタコトでもいいので日本語でしゃべりながら地元の料理や音楽をカメラで撮ったもの、自分の日本語学習進捗をXにアップロードしインプレを稼ぐのです」とXにポストしました。

すると、この投稿が国内外から大きな反響を呼び、ナイジェリアのユーザーなどから「どのように投稿をすればいいかわからない」などと相談が寄せられたといいます。

これを受けて、「インプレゾンビというのはそもそも異文化問題が根底になるのではないか」という考えを持つようになった投稿者さんは、当事者らとの交流を試みました。

最初はナイジェリアの人々との交流から始まり、無意味なインプレ稼ぎ投稿ではなく現地の写真を投稿してもらうように誘導したといいます。

「現在で最もアクティブなユーザーはナイジェリアの人たちで、今もなお日本語を勉強していたり、ナイジェリアの料理についてのポストをしてくれています」と投稿者さんは語ります。

「5月に交流のあったインドのユーザーはインプレゾンビをやめてくれて、他ユーザーにもインプレゾンビをやめるように呼びかけてくれています」。

こうしてコミュニケーションを取ったインプレゾンビは実に100人以上。

その結果、30人以上がインプレゾンビをやめてくれたといいます。

この結果を見て、規模を拡大すれば本格的にインプレゾンビ問題を解決できると感じたことで、プロジェクト発足に至りました。

「インプレゾンビ」問題解決に向けて

しかし、全員が全員、すぐにインプレゾンビを辞めてくれる訳ではありません。

本プロジェクトの難点について、投稿者さんは国によって文化や経済の違いがあることを指摘しました。

例えばインドのユーザーは一般的にITリテラシーが低く、Xを使う動機がお金儲けであることが大半で、日本のようにコミュニケーションツールとして捉えていません。

また、ヒンディー語のXはエンタメ性に乏しく、クリエイターも少ないため、ネット文化を楽しもうという土壌が育っていないといいます。

したがって、投稿者さんが長期的な解決を目指していても、当事者らはすぐにお金が欲しいため、効果が出ないと早々に見切りをつけられてしまうこともあります。

それでも、投稿者さんは異文化の人々と対話し、共に問題解決を目指すという姿勢を崩していません。

「Xが抜本的な対策を打ち出さず、日本を含めユーザーが国際的に自衛している状況下ではXを使う以上、諦めて許容か防衛しかありません。

私はその中で『産地』を訪問して『壁の向こうの隣人』として話して、何か解決方法がないか探しています」とコメントしました。

投稿者さんはインプレゾンビに悩まされている日本人に対し、「自分の意志を表明すること」「コメント(リプライ)を管理すること」「良いコメントや投稿を褒めること」の三つの対策を推奨しています。

インプレゾンビ問題の大きな要因として、当事者の多くがスパム行為だと認識できていない、という現状があります。

したがって、インプレ稼ぎ投稿がXのスパム規定「Xを使用した他者の経験の妨害」にあたることを伝えたり、通常のコミュニケーションを取れる機会を設け、「スパム行為は日本で嫌がられている」という話題を共有することが大切だといいます。

意思疎通ができず、やたらと迷惑なコメントを残していくと思われがちなインプレゾンビですが、彼らも生身の人間であることを忘れてはいけません。

言語や文化の壁を乗り越え、互いの意志を尊重し合いながら健全な言論空間を共に築くことが求められます。

「インプレゾンビよ人間に戻れ!インド400万人規模対象の大規模広告を掲載したい!」プロジェクトは現在、支援を受付中です。

インプレゾンビ問題の解決に関心がある方は是非、覗いて見てください。

出典:@masayasan201911

Text by 楊文果