安倍首相、最速47ヶ国訪問の成果を海外メディア評価 一方、中国に及ばないとの指摘も

 安倍晋三首相は、25日からメキシコを皮切りに、ブラジル、コロンビア、チリ、トリニダード・トバゴなど南米諸国訪問を行っている。同首相は海外を精力的に飛び回っており、今回の訪問を含めると、18ヶ月で47ヶ国を訪問したことになる。

【世界で最も活発な首相】
 まさに世界を股にかける外交を展開していると海外紙は報じている。フィナンシャル・タイムズ(FT)紙は、安倍首相は、国々を訪問したという点で判断すれば、賑々しい成功を収めたと言えるだろう、と評している。

 数からすれば、世界のどの首相よりも活発だ。日本歴代の首相としては、小泉首相の48ヶ国(5年5ヶ月)が最多だが、9月にはそれを追い抜くとみられている。海外権益に抜け目ない中国の習近平国家主席でさえ、これまで23ヶ国だという。

 安倍首相は24日、外国訪問について「懸命に働いてきた」と述べた(ブルームバーグ)。同時に、経済政策の当面の成功と、原発技術をトルコ、潜水艦技術をオーストラリアへと売り込みが成功したことをもアピールした。2013年と比較するとインフラ整備の日本への発注が3倍になったことも挙げた。

 内閣官房内閣審議官の谷口智彦氏は、安倍首相就任前の日本外交はほとんど不能に陥っていた、と述べた。「安倍首相は、日本はここにいるぞと、期待するだけの力を持っていると、世界に示そうとしているのだ」(ブルームバーグ)

 同首相はこれまで、日本の存在を印象付けるため、国際的な場でも演説を行なってきた。ダボス会議、パリのOECD閣僚理事会、ニューヨーク証券取引所、ロンドンの王立国際問題研究所、最近では、オーストラリア連邦議会で日本の首相として初めて演説を行った。

【日本は中国に勝てない?】
 日本は概して、インドネシアやタイなどのASEAN諸国との関係強化をうまくやってきたし、中国の台頭に神経を尖らせているインド、フィリピン、ベトナムなどの日本への支持を取り付けることもしてきた、とFT紙は報じている。一度は中国と強く結びついていたミャンマーでさえ、日本になびいているという。

 しかしながら、日本が相手と睨んでいる中国は依然優位だ、と海外紙はみているようだ。南米では、中国がその存在感を増しているという。中国は、ブラジル、チリ、ペルーの最大貿易相手国で、アルゼンチン、コロンビア、石油資源の豊富なベネズエラなどの国の第2の貿易相手国なのだ。

 日本の経済規模は5兆ドル、これに対し中国は9兆ドル。アジア強者の座を獲得するため互角の戦いは無理だ、とFT紙はみている。しかしまた、日本が各国と中国よりも長い歴史的な繋がりがあることにも言及している。

【これからは国内問題重視】
 一方、シンガポールのビジネス・タイムズ(BT)紙は、安倍首相が国際社会での経済的・政治的な存在感を増すため、海外を駆け回ってきたが、これからは国内問題に重点を置かねばならなくなっている、と報じている。

 地方経済の回復が遅いため、内閣の支持率が下がっているというのだ。

 同紙は、アベノミクスの発表は世界を驚かせたが、金融緩和や経済への刺激策や改革の恩恵が国全体に等しく行き渡らなかったことが支持率低下の要因だろうとみている。加えて、戦後の平和憲法再解釈を進めたこと、秘密保護法の制定、長年の武器輸出禁止の方針を転換したことなども世論には不評だ、と報じている。

 これに対し安倍首相は、地方経済に関する新しい閣僚ポストを置いたのに加え、25日、地方経済の押し上げと、公共工事全体を効果的に行うため、内閣官房に「まち・ひと・しごと創生本部設立準備室」を設置すると発表した。また先週には、2015年度の4兆円規模の特別枠を決めた。

 これらの経済対策に力を注ぐため、安倍内閣は、秋の臨時国会では、難航が予想される集団的自衛権行使容認を含む防衛関連の法案提出を見送るとみられている。

 しかしジャパン・タイムズ紙は、これらの推測の一方で、安倍首相が国内の経済問題に主眼を移したのは、政治的な動機からだとの見方も取り上げている。同紙は、「支持率が落ちているが、来月には多くの重要な地方選挙が控えているという問題に直面している」と報じている。

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Text by NewSphere 編集部